『チェンジ&ノーチェンジfromヒビキ』



その夜、僕はとても不思議な夢を見た。
何故だか知らないけど僕がシルバー君になっていて、ゴールド君と喧嘩する夢を。
夢の中の僕はとても僕と思えないほど口調が悪くて、本当に僕なのかとさえ疑った。
それほどに僕はシルバー君になりきっていたのだ。
しかし僕がシルバー君になっているという意識だけはあって、とても不思議だった。
言いたくないことを言ってしまって、ゴールド君を傷つける僕。
夢とはいえ、どこか心苦しかった。
その場から立ち去ろうとするゴールド君の腕をとっさに掴めば、頭に凄い衝撃。
蹴りをいれられたと気づくまでそう時間はかからなかった。
振り返った彼は涙目で僕、いやシルバー君を見ながら、こう叫んだ。
「さっさと起きろ!!!」






「うわっ!?・・・・・あ、あれ?夢、だよね・・・・・・・」


あまりにも大きな声だったため一気に夢から覚める。
びっくりした。
あの緊迫した場面でさっさと起きろって・・・・。
どんな夢だか・・・・・・。
・・・でも、ゴールド君ならいいそうかな。
ふ〜、なんだか妙な目覚めになっちゃたけど早く起きて・・・・って、あれ?
僕、こんなパジャマ着てたっけ?
というか、さっきのって、本当に夢?
それにしては妙にリアルティーあったような・・・・・。


「やっと起きたかよこの低血圧が。俺はてめーの目覚ましか!?いい加減一人で起きられるようになれっつーの!」

「ひゃっ!?」


いきなり耳元で大声が聞こえ、びっくりしてそちらのほうを見れば何故だかそこにはゴールド君が。
え、なんで?
どうしてゴールド君が僕の部屋に!?
だって昨日はちゃんと鍵かけて寝たし、第一僕の部屋と彼が住むポケスペ学園の寮は距離が遠すぎるし。
ありえない。
ゴールド君が此処にいることなんて絶対にないはずなのに、なのにどうして!?


「ひゃって・・・・・、頭でも打ったか、シルバーちゃん」

「え、シル、バー?」


呆れたようにそういうゴールド君の顔を見て、やっと自分の異変に気がついた。
なんか、なんか、妙に手が大きいし、この首にかかる感じの鬱陶しい赤い髪。
・・・・まさか、まさかまさか!?


「っ、おいシルバー!?」


慌ててベッドから飛び起きて洗面所へと走る。
その時も感じる違和感。
これはいつもの体じゃないとひしひしと伝わってくる。
だって僕の景色って、いつももっと低いもん!
それに、さっき立ち上がったときゴールド君と身長が同じくらいだったし・・・・。
本当に、まさか!?


「・・・・・・うそ」


洗面所の鏡を見て驚きの声を漏らす。
だってそこには、いつもの僕じゃなく、
きりっとした顔立ちの、いかにも綺麗に分類される、
『シルバー』君が居たのだから。


「うっそぉぉぉぉ!!!!!!!」
























「・・・・・・おいシルバー、どうした?今日はいつにもまして変だぜ」

「・・・・・・・・・・・・」


あれから洗面所にきたゴールド君が僕の頭を叩きリビングへと連れて行った。
さっさと朝ごはんを作れといわれてかなり戸惑ったけど、僕もおなかがすいていたので冷蔵庫にあったもので簡単につくってみた。
幸いいつもやっていたおかげかすんなり出来、ゴールド君に叱られずにすんだけど、やっぱり味付けがいつもと違ったらしい。
なんか変だと聞いてくる。
僕はそれにどう答えようかと迷った。
ここは正直に言うべきなのか。
でも、正直に話したところで信じてもらえる?
だって、ゴールド君はシルバー君のこと大嫌いなんだよ?
そんな相手がいきなりヒビキだと名のったって、信じてもらえるはずが無い・・・・。
それどころか、下手すると余計に二人の仲を悪くすることに・・・・。
それだけは絶対に駄目だ!
やっぱりここは、まだ分からないところが多いけど、シルバー君になりきるべきだ!
あの夢のように!
・・・・・・・でも、出来るかな・・・・。
あんな罵倒の数々、僕にはとても思いつかないよ・・・・・。
うう〜、どうしてこんなことになっちゃったんだろ。
ゴールド君はさっきからこっち睨んでるし、恐いよ〜・・・・・・・。


「・・・・・・・・っ」

「なっ、ちょっ、マジどうした!?なんでいきなり泣くんだよ!?」

「だってぇ〜・・・・」


後から後から涙があふれ出てくる。
シルバー君が泣くはず無いって分かってるけど、やっぱりゴールド君恐い。
それに一日シルバー君になりきるなんて僕には無理だよ!
というか、本当にもとの僕に戻れるの?
もしこのまま戻らなかったら・・・・・・・。
うう〜・・・・・・・。


「あーーー!!!訳わかんねー!!なんだ!?これ、俺が悪いのか!?」

「ちがっ、ゴールド君は、悪くない・・・・・」

「ゴールド君!?・・・・・っ、ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!シルバーが壊れたぁぁぁぁぁ!!!!!」


僕の言葉にかなり顔色を悪くさせるゴールド君。
そっ、そっか。
シルバー君が、ゴールド君なんて言うはずが無い・・・・。
しまった。
失敗しちゃった。
いきなり泣いて困らせちゃうし、シルバー君にはなりきれないし、僕って、僕って、


「ふわぁぁぁぁぁんんんんん!!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!誰か、ヘルプミー!!」


役立たず。
そう考えたときだった。
いきなり部屋のドアが開く。
バンッという大きな音と共に二つ縛りの女の子(確かクリスタルさんだったはず・・・)が出てきて、ゴールド君の胸倉を掴んだ。


「ちょっとゴールド!?あんた今何時だと思ってるの!?昼よ昼!さっさとシルバー起こして学校にって、・・・・・え?」


そこまでいいかけて僕らの異変に気づいたのか、信じられないもの見る目で僕を見てくる。
ぱっと掴んでいた胸倉をはずし、僕に近づいてくる。
そのさい落とされたゴールド君はかなり痛そうだった。
僕に近づいてきたクリスタルさんは、どうしたの!?と聞くと、ハンカチで涙を拭いてくれる。
その優しさが妙に嬉しくて、また涙がこぼれた。


「・・・あ、ありがとう・・・・」

「・・・・シルバー、本当にどうしちゃったの?なんか、変よ」

「そうなんだよ!さっきからこの調子でよ!こっちが戸惑っちまう!つーか気持ちわりぃ!!」


あんたは黙ってなさい、ゴールド。
そういってゴールド君を蹴り飛ばしたクリスタルさんは、さらに僕に近づくと、じっと瞳を見つめた。
訳が分からなくて曖昧に微笑みかえせば、聞こえるか聞こえないかの声でこう聞いてくる。
あなた、ヒビキ君?
驚いて目を見開けば、そうなのとどこか納得したように頷くクリスタルさん。
すぐに僕から離れると、寝ているゴールド君を掴み上げ、有無を言わさぬ笑顔でこう言った。


「よく聞きなさい。今日寝坊したことは今から屋上に行くことでチャラにしてあげる。いい、絶対に二人でいくのよ?分かった!?」

「なっ、俺を見捨てる気かよクリス!!こんなシルバーと一緒なんて・・・・」

「文句あるの!?」

「・・・・・・・・・・・ない、です」


うわっ、ゴールド君弱っ。
完全に気迫負けしてるし。
でも、なんで屋上なんだろう。
さっき、クリスタルさんは僕のこと分かったみたいだったけど、もしかしてそれに何か関係が?
・・・・・ひょっとして、困ってる僕を助けてくれたとか?
でも、本当になんで屋上?
そんなんで、この『入れ替わり』が直るのかな・・・・・。
・・・・・いや、ここはクリスタルさんを信じてみよう。
どっちにしろ今のままじゃ何も変わらないし、少しでも何か変わるなら、やるべきだ。
よし、行こう!


「ちっ、こんなんならシルバーほっといてさっさと学校行けば良かったぜ・・・・」

「そんな事言わないで、屋上行こうよ」

「・・・・・・・・ちょっ、お前、マジ変だって」


あ、しまった。
シルバー君はこんな風に言わないか。
う〜ん、でももう言っちゃったものは取り消せないし、仕方ないか。
このさい気にしないでいこう。


「行く・・・・ぞ」

「うわっ!?」


ゴールド君の腕を引っ張って部屋を出る。
まだ喋り方になれないけど、あんな感じでいいんだよね?
というか、シルバー君力強いな。
あっさりゴールド君引っ張れるし。
それに以外にゴールド君も腕細いんだな。
筋肉がついてないわけではないけど、しなやかについてるっていうのかな。
凄く丁度いい細さ。
なんだかシルバー君がゴールド君に引かれる理由が分かった気がする。


「おいシルバー、屋上への道、違ってるぜ」

「え、あ・・・・・、そっか」


ある程度歩いてきたところでそういわれる。
そっか。
僕の学校じゃなかったんだ。
屋上への道は当然違う。
となると困ったな。
ここまで来ちゃったし今更ゴールド君に聞くのもかっこ悪い。
・・・・まあいいや、適当に歩いちゃお。
きっといつか着くよ。

その数分後、やっと僕らは屋上に着いたのだった。













「げっ」

「あ」

「・・・・・・・・・・・・・」


屋上にはある人物がいた。
その人は僕ら二人を見るとにっこり微笑み、サボりデートですかと聞いてくる。
勿論ゴールド君が即座に否定して、僕との距離を離した。
それを見て彼はさらに笑い、何しにきたのかと聞いてくる。
その笑顔には妙に迫力があって、少しびっくりする。
ハート君って、普段こんなに恐いんだ・・・・・・。
ゴールド君はなれてるのか、普通に受け答えをするとその場に座り込む。
僕もその隣に座って、彼をじっと見つめた。
すると彼もそのことに気づいたのか、僕を見てくる。
そしてこう言った。


「・・・・・・シルバー先輩?・・・・・なんか、おかしくないですか?」

「そう!そうなんだよ!」


その言葉に反応したのは僕じゃなくゴールド君だった。
ふーと溜息をついた彼は、笑顔を崩さずに黙れというと、じっと僕を見てくる。
少し居心地が悪くて下を向けば、ふとあるものが目に入る。
うわ〜、おいしそうなお弁当。
ハート君が作ったのかな?
本当に美味しそう!
特にあのミートボールなんて・・・・。
いいな〜、食べたいな〜。


「わー、おいしそう・・・・・だな、えっと、食べても・・・・いいか?かな」

「・・・・・なっ、何言ってんだよ、ほんとさっきから気持ち悪いぞお前!」


素直にそう聞けばゴールド君が気持ち悪そうにする。
今のもおかしかったのかな。
う〜ん、やっぱシルバー君になりきるのは難しいな。
ハート君はどう思ったんだろう・・・・・。
おかしいと思ったのかな。


「そんなに食べたいならあげますよ」


予想とは反して、笑顔でミートボールを渡してくるハート君。
驚きながらも喜んでそれを受け取れば、隣でゴールド君が叫んだ。
床を叩いたり髪の毛をかき回したりしてかなりおかしい。
大丈夫かな。


「・・・・・どうしたのゴールド君・・・・、じゃなかった、ゴールド」

「・・・・・・・・てめぇのせいだっつうのぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ちょっ、助けろよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」


心配して声をかければ僕のせいだといわれてしまう。
やっぱりおかしかったんだ。
でも実際シルバー君じゃないわけだし、ある程度は仕方ないと・・・・・。
というか、ハート君も気づいてるはずだよね?
なのにどうして黙ってるんだろう。
何か考えているのかな。


ピリリリリ!!!


丁度その時、携帯電話の音がした。
どうやら誰かの携帯が着信を受けたらしい。
ゴールド君が確認しないところをみると彼ではないらしい。
僕も携帯は持ってきてないし、とういうことは消去法でハート君ということになる。
しかしハート君のはずなのに彼はなかなか電話に出ようとしなかった。


ピリリリリ!!!

何回かの着信音の後、やっと彼は電話に出た。
ただ・・・・・・・・・。


「ソウルかよ・・・、えっと、何々?『・・・・・・ヒビキがやばい。至急ヘルプ』・・・・なんだこれ?」

「って、メールだったのかよ!」


どうやらメールだったらしい。
内容は僕がやばいというメール。
もしかして今まで考えてなかったけど、僕がシルバー君になったということは、シルバー君が僕になっている可能性もあるということ。
それで今のメールって、何やったんだろうあの人。
勢いあまってカナデとか殴ってなければいいけど。
だっ、大丈夫かな。
そわそわと心配する僕をよそに、二人はなんだか訳の分からない事をはなしている。
なんか人を騙すときがどうとか・・・・・・。
明らかにそれどころじゃないと思うけどな。


「至急ヘルプねー・・・・、えっと、『詳しく説明よこせ』と。よし、送信」

「命令系かよっ!!」


ピピピとボタンを押したハート君が送信ボタンを押すのが見えた。
しばらくしてソウル君から返事が返ってきて、それを見たハート君が長っと言葉を漏らした。
後ろからこっそり覗き込めば確かに文字の行列。
なっ、長い。
というかこれをあの短時間で一人で打ったの?
しばらくといっても一、二分しかなかったけど・・・・・。
すっ、凄いな。


「シルバー先輩」

「・・・・・・・え、あ、はい」


メールを読み終わったらしいハート君に突然そう言われて一瞬自分のことだと理解できなかった。
妙な間ができてしまいハート君は黙る。
そのまま何か考えるそぶりを見せると、まっ、いっかと呟いて、俺もう帰りますと僕に向かっていった。
どう返事していいか分からずにいると、ゴールド君が帰ろうとしたハート君の腕を引っ張ったのが見えた。
なんだか必死の顔をしており、ハート君は溜息をつく。
そのあとまた何かを考えており、今度はいいこと考えたと呟き、誰かにメールを送る。
その後ゴールド先輩の手を振り払うと、にっこりと笑って僕のところへ来た。


「シルバー先輩♪これ、飲んでください」


渡されたのは小さなビンに入った色が変な薬。
目で大丈夫なのと聞けば、さらに笑みを深めるハート君。
大丈夫なのかな?
でも大丈夫だよね。
ハート君が僕に変な薬渡す理由ないし。
きっと何か事情があるんだよ!
うん!
ビンの蓋をはずしてそのまま一気飲み。
するとそのとたん頭が痛くなって、目の前が真っ白になった。
う・・・・、何これ。
なんか、なんか、体から、意識が離される感じ・・・・・。
もう駄目・・・・・・・・・。











「・・・・・・・あれ?」


あまりの苦しさに目を閉じれば、突然頭の痛さはなくなりおかしいと思って目を開く。
するとそこにはなんだか心配そうな顔をしたカナデとコトネ。
まるで実験結果を待っているようなソウル君が居た。
訳が分からなくてどうしたのと聞けば、いきなり二人に抱きつかれてしまう。
なっ、なにこれ。
だって僕さっきまで屋上に・・・・・・、って、あ。


「戻ってる・・・?」


抱きつかれながら自分の服を見ればいつも着ている着慣れた僕の赤いパーカー。
首にかかる髪はなくて、頭には帽子の感触。
間違いない、戻ってる!
でも、なんで?


「良かったな、戻って」


ふとソウル君にそういわれて彼をみれば、どうでもよさそうな顔でこちらを見つめている。
手に持っていた携帯を開き、誰かに電話をかけた。
分かったと短い返事だけすると、ソウル君はその場を去ってしまう。
その後姿に慌ててありがとうと言えば、ソウル君は優しく微笑んだ。
いまだ抱きついているカナデとコトネを引き剥がして、にっこりと微笑む。
そして『ただいま』と呟いた。
二人は訳が分からなかったみたいだけど、それでも嬉しそうだった。
僕もなんだか嬉しくなって、帰り道は三人で手を繋いで帰った。
今日一日色々あったけれど、結果的には楽しかった。
カナデ達が本当に僕を心配していてくれたことが分かったし。
それにソウル君とも少し仲良くなれた気がする。
・・・・・・そういえば、今日はカナデたちとでかけるつもりだったんだっけ。
もう夕方だけど、少しなら時間あるよね。
よし。


「二人とも、夕日がよく見える公園にでも行かない?なんだか行きたくなっちゃったんだ」








END






後書き
はい、急いで書き上げたチェンジ&ノーチェンジfromヒビキばんです。
いや〜、急ぎ急ぎ書いたからちょっと訳わかんないところが・・・・・。
しかもある程度話が出来ているものなのでその話とリンクさせるのが難しかった。
おかげでなんだかおかしなことに・・・・・。
しかも無駄に長い。
どのくらい長いかといいますと、今まで書いた話の中で一番です。
ちょっと長すぎましたね。
今度からは短く書くよう心がけます。
さて、ここでおなじみの台詞を言わせて貰います。
苦情書き直しバンバン受け付けるぜ!よろしく!
・・・・・はい、あ、後今回は、大変遅くなって申し訳ございませんでした。
ちょっと話が思いつかなくて・・・・・・。
その代わりと言ってはあれですが、お詫びにもう一つはなしを書かせていただきました。
タイトルは『恋模様』です。
糖度多めです。
では、こちらからお入りください。
本当にすみませんでした!