『非日常モンスターズ』
どうしてこうなった。
俺は目の前に立ちふさがる男を見て、そう思った。
たしか今日は親が居ないからゲームざんまいだったはず。
なのにどこをどう間違えばこうなるうのだろうか。
俺の名はゴールド。ただ今命の危機に面しています!あは☆
・・・・・・・うえ、気持ちわる。吐きそう。
自分のキモさに吐きそうになりながら、俺は今朝までのことを走馬灯のように思い出した。
そう、思えば今朝から何かがおかしかった。
いきなり親はちょっとそこまでなノリで子供を置いて旅行に行くし。
登校中にカラスに鳴かれるし、黒猫は横切るし。
学校では週に一回校内で一番運が悪い人を決めようという校長のくだらない思いつきのくじ引きで、俺の名を呼ばれるし。
部活では顔面ボールだし。
終いには帰り道、最近噂の血を抜かれた死体を見つけるし。
なんか運が悪いなーと思いつつ、普通に過ごしてきた俺だが、さすがにこれは想定外デス。
まさか、本物の吸血鬼に襲われるなんて。
「やっぱ家で晩御飯を済ますべきだった・・・・」
そんな後悔をしても状況は何も変わらない。
あーあ、真面目に死と対面することになるとはなー。
今日の俺って本当に運が悪いZE☆
もっとゲームとかしとけばよかった・・・・・って、なんで諦めモードに入ってんだよ!
逃げるとか考えろよな!
「・・・・・・・・恐怖を感じないのか?」
ぶつぶつとどうやって逃げるかを考えていると、ふと聞こえる声。
ここには俺とあいつしか居ない。
つまり俺以外の声が聞こえたということは、消去法であいつの声ということになる。
なんだ、しゃべれたのか。
妖怪っていうのは、しゃべれないものと思っていたんだけどな。
実際会ってみると違うものだ。
まっ、会いたくは無かったけどよ。
「恐怖・・・・・・か」
ちらっと奴の足元に倒れている、・・・・・いや、散らばっている死体を見る。
1、2、3、4・・・・・・・。
全部で6体か?
どうやらたむろっていたところを襲われたらしい。
不良たちだからこんな時間に外に出ていてもおかしくねぇ・・・・が、それが仇になったな。
つーかそんだけ人数居るんだったら倒せよな!
・・・・・・まあ、それだけあいつがつよいってことだろうけど!
俺にとっては絶望にしかならねぇ。
弱ければ倒そうと思ったのによ!
「それを感じたところで何か変わるのかよ。せいぜいお前が喜ぶくらいだろ」
確かに。
そういって笑ったのが分かった。
月に照らし出された奴の顔はひどく無機質で、やっぱり人ではないんだと改めて認識させられる。
一歩奴が近づいて、俺は身構える。
いつでも抵抗できるように、足だけはすぐ動くように意識を集中させる。
しかしそんな俺に奴は意外な一言を言った。
「勝負をしないか?」
「勝負・・・・、だぁ?」
「そうだ。三時間やる。俺から逃げ切ることが出来たら見逃してやろう」
いきなり何を・・・・・。
何か魂胆があるんじゃねぇのか?
獲物を目の前にした肉食獣は、そんなまわりくどいことしないと思うけど?
じっと疑いのまなざしを送れば、ふっと笑って奴はこういった。
「俺は今食事を済ませたばかりだからな。そこまで血を飲みたいとは思っていない。・・・だから、運動がてらに、ということだ」
なるほど。
思わず納得し、このまま食べられるのを待つよりはいいかと思った。
逃げる、だけならなんとかなるかもしれねーし。
よし、受けて立とうじゃねーか!
「分かった。・・・・・スタートはどうするんだよ」
「十秒数える。だからせいぜい逃げてみろ」
OK、分かった。
シンプルで分かりやすいルールだ。
つかまったらアウト、逃げ切れば勝ち。
まるで鬼ごっこだな。
静かに奴が十秒を数え始めるのを待ち、音とともに走り出す。
そして十秒後、目の前から消えた俺を見て奴が、こんなことをいっただなんて俺は知るはずが無かった。
「・・・・・・・・・少し見くびっていたな」
ぎゅっとあるものを握り締め、俺は体制を低くさせる。
よく闇にまぎれて、ってやつがあるが、今の俺の状況はまさしくそれに当てはまるだろう。
走って逃げる、っていうもの考えてんだけど、よく考えたら相手は妖怪だし。
そんな事が出来るなら最初からそうしていただろうし。
つまり逃げるなんかより、隠れてぶっ倒して、気絶でもしてくれれば儲けもん。
・・・・・と思っていたけど、もう一時間もここに居るんだよな〜。
いい加減飽きてきたぜ。
まさか見つけられないなんて事はねぇよな?
「だぁぁぁぁぁーー!!!!さっさと見つけやがれ!」
そう叫んだ瞬間、ふと背中に寒気。
とっさにその場から動き、光の下に出る。
すると俺が動いたのと同時にそこにあったものすべてが大破した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
見れば空に浮かぶ人影が。
ははっ、随分乱暴なことで。
俺ごと壊すつもりだったのかよくそ野郎!
・・・・・・・・・っても、もともと殺すために探してたんだよな。
こちらのルールが通用するはずねーか。
「たっく、少し乱暴なんじゃねーの?闇討ちしようと思って隠れたのによぉ」
「・・・・・・・一つ忠告しよう。かくれんぼ中は大声を出さないほうがいいぞ」
すたんと地面に着地し、奴は静かにそういった。
・・・・・・・大声、ね。
なるほどなぁ、つまり見つかったのは俺のせいだと?
・・・・・・うるせーよ!余計なお世話だ!
悪かったな!単純な性格でよ!
「大声だけがとりえなんだよ」
「そうか。なら観念して捕まるんだな」
こつんと足音を響かせ、一歩一歩確実に俺に近づいてくる。
俺は手に握っていたものを構えると、戦闘態勢にはいる。
奴はしばらくこちらをきょとんと見つめていたが、やがてくくっとのどを鳴らし、可笑しそうに笑った。
「普通は十字架を構えるところだがな」
「はっ、そんな迷信信じてるのかよ。そんな頼りねーもんより、俺にはこいつが一番なんだよ!」
手に握られるのは特性のキュー。
わざわざ家にまでとりにいったんだぜ?
十字架やにんにくもあったけど、そんなもんあるだけ邪魔!
迷信なんて真実とはかぎらねーんだよ!
いつだって信じられるのは目の前にあるものだけ、そうだろう?
「本当にお前は面白い奴だ」
「そりゃどうも」
会話だけは穏やかに、しかし緊張感はなくならない。
どちらが仕掛けたのか、いつのまにか激しい戦闘が始まる。
手を出しては出されて、防いで、しばらくそんな攻防が続いたが、ふと俺は気づいた。
奴は息一つ乱れていないことに。
こんだけ動けば普通の人間なら体力切れになるはず。
もしくは、疲れて動きが鈍るはず。
俺はいきなり手を止めると、キューを下に落とした。
カランと乾いた音が当たりに響き渡った。
「・・・・・・どうした?」
「やめた」
それだけをいい、着ていた服のボタンを二つほどはずし、首が見えるようにする。
吸血鬼を目の前にして随分奇怪な行動に見えただろうか。
奴も面を食らっていたようだったが、すぐに表情を戻し、じっと俺を見つめた。
俺は強気に笑って見せると、右側に首を傾けた。
そしてこういう。
「食えば?俺は諦めた。化け物には敵わねぇぜ。無駄な労力は消費したくないの俺は」
「・・・・・・・・・そうか」
それだけを言うと、やつは俺の首に噛み付いた。
ちりっとした痛みが走り、すぐに血が抜ける感覚。
これから死ぬんだろうな、と考える自分と、あーあ、不味そう、どこか他人事のように考える自分が居た。
さてはて、死んだら天国にいけるんですかねぇ?
そんな考えを最後に、俺の意識はブラックアウトしていった。
END
後書き
久しぶりのパロディ小説だぜ!
・・・・・え、できが悪いって?
それは気にしない方向で。
しかし、俺は書いている途中でとんでも無いことに気づいてしまった!
なんとこの小説、シルバーの名前が出てきてないんだぜ!
いや〜、ちょっとありえない話だよね〜。
まあでも、わかるでしょ、うん。
・・・・・・自分勝手だって?
いいじゃん別にー!(本心は申し訳ないとおもっています!)
ではではこの辺で・・・・・・。
あ、ちなみにこれオマケです。
*背景は、『Photo by Natuyumeiro』こちらからおかりしました。