『雪日和』


今日は朝から雪が降っていた。
いつもより防寒をしっかりさせて学校に行こうとしたとき、ふと気づいた。
珍しくあいつの靴が無いことを。
あいつは俺よりは朝が早い訳だが、もの凄く早いというわけでもない。
俺が起きる十分前かそこらに起きるだけで、大体朝は顔を合わせる。
もっとも、会話も何もしなければ、一緒に行く事も無いわけだが。
こんなにも早く出るなんて珍しい。
今日は雪が降るんじゃないか、って、既に降っていたな。
顔が見れなかったことを少し残念感じている俺を否定しながら、ドアを開けて寮を出る。
降り積もる雪はやみそうにない。
その寒さに顔をしかめながら、こんな日に外に出るなど馬鹿げていると思った。


(今日は学校を休めばよかった)


今更そのことを後悔し、教室へと足を速める。
遠くでチャイムが鳴っているのが聞こえる辺り、もう一時間目は始まっているのだろう。
今更教室に行くのもめんどくさい。
となれば、どこかでサボるのが一番だろうか。
やはりこの天気なら保健室だろう。
そんなことを考えながら靴を履き替えていれば、ふとあるものが目に入った。
『ゴールド』と書かれた下駄箱が開いている。
そしてそこに外靴は無く、上靴のみが無造作に置かれていた。
急いでいたのか、単にめんどくさかったのか。
俺は少しの間考えると、履き替えようとした上靴を残し、そのまま外へと戻った。









案の定、ヤツは裏庭にいた。
俺には気づいてないのか、仰向けになって空を見上げており、その体にはいつから居たのか雪が積もっている。
こんな天気なのに外でサボるとかこいつは底抜けの馬鹿なのか。
しかもなんて格好をしている。
俺なんて手袋やマフラーだけでは足りず、コートも着てきたというのに。
夏服を着ているなんて、やはりこいつは馬鹿なんじゃないのか。
自分の格好とゴールドの格好を見比べ、寒くないのだろうかと思った。


「・・・・・・・よぉ、今日は随分遅かったな、シルバーちゃん」

「・・・・・・起きていたのか」

「起きてちゃわりーかよ」


突然ゴールドは閉じていた目を開けると、俺にそういった。
寝ているのかと思った。
あまりにも綺麗な顔をしていたから。
ヤツは俺に見下ろされるのが嫌だったのか体を起こすと、大きなあくびをした。
やっぱり寝てたんじゃないのか。


「あー・・・、ちょっとな。ま、てめーの足音で起きたけど」

「・・・・音を殺して歩いたつもりだったんだがな」

「雪の日ってのは静かなもんだろ?目立つんだよ、雑音が」


俺は雑音か。
そういいかけて、やめた。
ゴールドはどこか遠い目をしていたから。
俺は確かに奴の視界に居るはずなのに、その目はまるで俺の存在を認めてないかのようだった。
雑音どころか、存在すら認めてもらえてないのか。
その事に何だか妙に不安にも近い苛立ちを覚え、俺は知らず知らずのうちに奴を睨みつけていた。
するとヤツは、いつもの様な挑発声で、いつもと違う笑い顔をしながら、俺に言った。


「シルバーちゃんこわーい」


くすり。
まさしくそんな表現が正しいような笑い顔で、ヤツはいう。


「・・・・・・・・悪かったな。俺は馬鹿と違ってセンサイなんだ」


その途端、また先ほどと似たような苛立ちが俺の中に広がった。
よほどしかめっ面をしていたのか、ヤツはまたおかしそうにけたけたと笑う。
ああ、イライラする。
朝だからなのかわからないが、とにかくイライラする。


「着ろ」


イライラを誤魔化すためなのか、それとも他に意味があるのか。
俺は自分でも分からぬままにコートを脱ぐと、ソレを奴に叩き付けた。
顔に直撃したらしく、ヤツは苦しそうに声を出した。
そのままコートは手の中へとすべり落ち、丁度ひざにかけているような、そんな形になった。


「・・・・・・貸してくれんの?」

「見ているほうが寒い」


それだけを言えば、ヤツはまじまじとコートを見つめる。
袖を引っ張ったり、裏返してみたり。
まるで初めて玩具をもらった子供のようだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・ま、着てやんねーこともねーけど」


しばらくそんな事を繰り返すと、ヤツはやっとコートに袖を通した。
どことなくその顔はうれしそうだった。
それを見た途端なんだかなんともいえない感情に襲われ、俺は誤魔化すように奴から目をそらした。
相変わらず雪はやみそうにない。
いったいいつまで振り続けるのか。
このまま世界は雪に覆われてしまうんじゃないのだろうか。


「明日にゃ晴れるらしいぜ」


そんな俺の考えを読んだのか、ゴールドはタイミングよくそういった。


「そうか」


俺はそれだけを言い、振り続ける雪を見つめた。
明日にはやんでしまう雪は、どこか儚げだ。
儚くて、綺麗で、そして・・・・・。


「今のうちに色々やっとかねーとな」


楽しそうにそういう奴の横顔が、なんだか雪と被ってみえた。
いっそのこと、雪に埋もれてしまえばいいのに。
自然とでたため息は、どうしようもなく白かった。






END


後書き
書き直し、第・・・・七弾だよな。
昔の作品を書き直すのは結構疲れます。
オチをつけるのがつらい。
え?今回?
あっはっは!
書き直すの途中で飽きてきて、適当にオチつけたとかそんなんじゃないですから。
うん、ほんと、そんなんじゃっ・・・・・。
・・・・・はい、嘘です。
適当につけました。
すみません。
全部の作品アップまでにはもう少しかかるかなー。
しばしお待ちを!