この世には随分不思議な事がおこるものだ。
俺は鏡に映る自分の姿を見てそう思った。


『チェンジ&ノーチェンジfromシルバー』


朝起きたら、見たことのない部屋に居た。
壁にはやけに可愛らしいカレンダーがかかっており、枕元には人形まで置いてある。
なんだこの部屋は。
そう思ったとき、タイミングよくドアが開く。


「おーい、入るぞ・・・って、なんだ、起きてたのか」


ドアのほうを見れば、そこにはいつか会ったカナデという男と、見知らぬ女が立っていた。
訳が分からず無言を突き通せば、溜息をつかれてしまう。
こちらに歩み寄ってきて、早く支度しろよといわれてしまった。
女のほうもニコニコしながら着替えを手渡してきた。


「・・・・・・なんだ、この状況は」

「「へ?」」


そう声を出せば二人とも目を丸くさせた。
しかしそれ以上に自分の声の高さに驚く。
明らかに自分の声ではない。
一体なんだというんだ。


「・・・・・・・・・・・・・・なっ」


ふと鏡うつる自分の姿が目に入り、さらに驚く。
そこにはいつもの俺じゃなく、この前出会ったヒビキの姿が映し出されていたのだ。
だからこの声か、と納得すると同時に、何故という疑問が浮かぶ。
どうしてこんなことになっているんだ?
特に何かやったというわけでもないし・・・・、心当たりは全く無い。
かといって戻る方法も分からないし、ここはあわせておいたほうが得策か・・?


「・・・・・ヒビキ君、なんか、怒ってるの?」

「・・・・・ヒビキ、もしかして今日俺達とでかけるのが嫌なのか?」


二人にそういわれ、どう返事をしようか困った。
原因は分からないが、俺が今ヒビキになっているというのはまぎれもない事実。
彼のイメージを壊さないためにも彼らしく返事をするべきか。
・・・・・・・いや、それは不可能に近いな。
ヒビキらしく返事をするなんて、俺には無理だ。
あんな可愛く返事するなど、俺に出来るはずが無い。


「出かけるとは何処に行くつもりなんだ?」


普通に俺らしく聞けば、二人ともぴしっと固まってしまった。
こんこんと叩けば、随分硬い。
・・・石、か?
なるほど、これが世に言う硬直するというやつか。
しかしこれからどうすればいいんだ?
こんな非現実なこと、解決策がみつからな・・・・・・、くはないな。
あいつに聞いてみれば、何かしっているかも。


「・・・・・・・・・・・・・」


頭に浮かんだ後輩を瞬時に消し、俺は私服へと着替える。
まあ、その時背が小さいとか袖が短いとか思ったことは、勿論ヒビキには内緒だ。




















「ちょっ、ちょっと待ってよヒビキ君!」


この辺はきたことが無いので適当に学校までの道を探していれば、ふと呼び止められる。
声がしたほうを見れば先ほど部屋に居た女達がいる。
息が切れているところをみると急いで追いかけてきたのか。
固まっていたからほうっておこうと思ったが、よく考えればこいつらに聞くほうが手っ取り早い。
上手いことポケスペ学園までの道を知っていればいいが。


「お前達、ポケスペ学園までの道を・・・・」
「「今日は私(俺)とデートの約束でしょ(だろ)!」
「・・・・・・・・は?」


思わず言いかけたことを途中でやめてしまう。
なんだって?
デート?
こいつらと、俺、いや、ヒビキが?
そんな約束をしていたのか。
だがあいにく今ヒビキは俺だからな。
そんな事に付き合っている暇は無い、いや、それ以前の問題か。


「・・・・・・・うわー、嫌な人たちに会っちゃったよ」


どうしようかと考えていれば、ふとまた後ろから声が。
後ろを振り返れば、そこにはめんどくさそうな顔をしたソウルが居て、なんてタイミングの悪い奴と同情したくなった。
しかし俺にとってはタイミングがよい。
逃げ出そうとしたソウルの腕を掴んで、こちらを向かせる。
ソウルはどこか諦めたようだった。


「・・・・・・・なんですか、ヒビキ、君?だっけ」


まだ名前覚えていなかったのか。
仕方がないというようにそう口にしたソウルに、そう思った。
人の名前の後にはてなマークをつけるとか、態度悪いな。
俺よりも物覚えが悪いんじゃないか?
それとも単に興味がないだけか?
まあどちらにしろ、今の俺には関係の無いことだが。


「今すぐハートに連絡を・・・・」


そう言いかけたところでおもいっきり後ろに体が引っ張られる。
引っ張ったのはカナデとカナデについてきていた女で、邪魔をするなとこっそり舌打ちをした。
ソウルはソウルでどうしようかと考え込んでいるみたいだし、なんだか面倒なことになってきた。
俺はただ俺に戻りたいだけなのに!
これじゃあおちおち寝ても居られない!!


「おいてめーヒビキに手を出すな!!」

「いや、出してないし。つーか出されてたの俺だし」

「言い訳無用よ!今後一切ヒビキ君に近づかないで頂戴!」

「近づきたくて近づいているわけじゃ・・・・・・」


そうこう考えているうちに変な言い争いまではじまってしまう。
ヒビキと付き合っているのは俺だとか(カナデ)、ヒビキ君は私の弟みたいなものだとか(コトネ)
さっさとパフェが食べたいとか(ソウル)どうでもいいんだよ!
お前ら少しいい加減にしろ!
そして俺の話を聞け!!


「・・・・・・・・・・お前ら」

「「「え?」」」

「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」


ドゴーン!!!!!!!!
















「・・・・・・・とりあえず、ソウルは携帯を出せ」

「え、なんで・・・・・・」

「いいから早くしろ!」

「・・・・・・・・はーい」


とりあえず近くの公園まで移動した俺達は、仲良く、って訳じゃないが、四人一緒のベンチに腰掛けた。
先ほど俺に殴られ・・・、まあこの相手からみたらヒビキだが。
そのことがよほどショックだったらしいのか二人は自暴自棄におちいっている。
事を起こすなら今のうちだ。
あの二人が意識を取り戻す前にさっさと済まさなくては。


「取り出したらハートにメールを打て」

「えー・・・・、あー、なるほどー。確かにこの変な状況を何とかしてくれるかも」


そう言いメール画面を開き早速ハートにメールするソウル。
・・・・・というか、メール打つの早いな。
指が高速で動いているんだが。
誰にでも特技の一つや二つはあるものだな・・・・。


メールだよ!


しばらくしてメールを知らせる着信音がした。
いまどきこんな着信音使ってる奴珍しいなと思いいつつ、さすがソウルだと妙に納得。
ソウルはメールを見て少し困っているみたいだった。
めんどくさいなーといいつつ、高速で文面を打っていく。
さきほどよりかなりの時間がかかったが、なんとか打ち終わり、再びハートに送信。
またしばらくしてあの間抜けな着信音。
返ってきたメールを見たソウルは何か納得した様子で。
カチカチと短いメールを打つと、携帯を閉じた。
そしてポケットからなんだか怪しげな薬を取り出し立ち上がる。


「まだ試作品の段階だってハートいってたけど、まあいいんだよな?どうなっても俺は責任とらないけど」


そんな事を呟きながら、にっこりとこちらをみて微笑むソウル。
思わずその笑顔に気をとられてしまい、ソウルの手の動きにまで頭が回らなかった。
いつの間にかさきほどの怪しげな薬が入ったビンの蓋ははずされており、俺に向かって投げつけられる。
勿論避けれる筈なんてなく、頭からその薬をかぶるはめになった。


(というかこれ頭からかぶっても効果あるのか?)


そんな少しずれた疑問は、だんだんと意識の外へと消えていく。
少しづつ目の前が真っ暗になり、最後には何も見えなくなる。
ふと頭がズキッと痛み、目をあければ・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


まんべんなく青い空が映し出されており、そういうことかと納得した。
ぐいっと体を誰かに引っ張られ、目線をそちらのほうに。
そこには案の定楽しそうな笑みを浮かべるハートが居て、これは抵抗しないほうがよさそうだと思った。


「ゴールド先輩、どうしてさっきからそんなに必死なんですか?」

「・・・・・・・は?」

「だって、シルバー先輩が素直になったんですよ?貴方にとってそれは最高にいいことじゃないですか。
なのにどうして不機嫌そうなんですか?」

「・・・・・・・っ」


よくみるとハートの目の前にはゴールドが居る。
何があったかは知らないが、奴はひどく辛そうな顔をしていた。
どうやら俺になっていたヒビキが何かをやらかしたらしいが、あいにく俺には分からない。
分かりたくもないしな。
どちらにしろ、弱った奴の顔を見るのはあまり気持ちのいいものではない。
ついそう思ってしまった俺に、心の中で舌打ちをした。
ああ、なんて無駄なことを!


「・・・・・・・・・・・俺はっ、素直じゃないシルバーの方が好きなんだよっ!!悪いか!だからさっさと戻りやがれっ!!!」


そのまま俺をハートから引き離し、自分のほうへと引っ張るゴールド。
予想外の展開に、少々戸惑った。
しかしそういった奴の顔が、とても強い瞳でハートを睨みつけていたため、どうでもよくなる。
素直じゃない俺が好き、か。
なら、俺は一生この気持ちを奴に伝えることは出来ないな。
それが唯一こいつの側にいれる方法なのだから。


「そうですか、それは良かった。ちなみに、シルバー先輩ですけどもう元に戻ってますよ?さっき薬飲んだ時点で。
にしてもヒビキと入れ替わるなんて、貴方もとことん面白い人ですねー」


俺に向けられているようで、俺に向けられていない言葉。
くすくすと笑いながらそういったハートの言葉を、やっと理解したのか瞬時に顔が赤くなるゴールド。
掴んでいた俺を乱暴に引き離し、そのまま猛スピードで屋上から出て行った。
あんなにスピードを出したら転ぶだろうと思った瞬間に、遠くでする転倒音。


「・・・・で、貴方はどうなんです?シルバー先輩」


今度はそう楽しそうに俺に聞いてくるハート。
俺は黙って入り口のほうまで歩くと、ぴたっと足を止めた。
そして振り返らすにぼそっとこう呟く。


「・・・・・・・・本当に嫌いな奴なら、追いかけようなど思わない」

それだけを言って、屋上の扉を閉めた。
素直じゃないって?
それは当たり前。
だってそれがアイツが望むことだから。
そして俺が望むこと。
素直じゃなくて結構。
俺はそんな素直じゃないこの日常がおそらく気に入っているのだろうから。





END


後書き
はい、シルバーバージョンの『チェンジ&ノーチェンジ』です。
色々と分かりにくいところはもとの話をみて理解して欲しいとおもっています。
特に最後らへんを。
ぶっちゃけたはなしハート君目線のより上手く書けた気がします。
なんだか調子が出てきたしこの調子でヒビキ君目線のを書こうかな・・・・・?
・・・・・・・・いやいやいや、そんな力量俺には、ない・・・・・・・・よな。
まあ、最初から最後までくだくだでしたが、楽しんでいただけたのなら幸いです。
それでは最後に一言。
『連載の準備は超時間がかかるんじゃぁぁぁぁぁ!!!!!!しかも二本同時にやろうとかもうアホだろ俺!!!!!!』
・・・・・・・・はい、以上です。
とりあえず第一話はどちらも出来上がったんですが、いきなり挫折しそうです。
もういっその事一本にしちゃおうかな・・・・。
・・・・・・・・・・皆様はどう思いますか?
一本がいいですか?それとも二本がいいですか?
しかもそのうち一本はそれぞれ違う目線をつくろうかなと思っているんです。
それについてはどう思いますか?
心の優しい方がいらっしゃったら、是非管理人に教えてください。(掲示板で)
よろしくお願いします!
(後書きが物凄く長くなってしまった・・・・)