「とんだ数日」



俺は今森の中に居る
なぜこんなことになったかというと、話は数日前にさかのぼる





数日前・・、俺は寮に帰るため、寮へと続く道を歩いていた


すると、ふと見たことある後姿を見つけた


(あれは・・、ゴールド・・?)


校門のほうへと向かっているゴールドに気づく。なぜ校門に?

いくら部活があるとはいえ、外まで行くことはないだろう


じゃあなぜ?
あの先には住宅街しかないぞ?




不思議に思った俺は、ゴールドに声をかけた


「ゴールド」


しかしアイツは足を止めない
そのまますたすたと、商店街の方へ歩いていく



「・・・・・あの馬鹿」



ちっ、と舌打ちをして、俺は奴を追いかけた







奴は商店街を通り過ぎ、公園の中を歩く
そしてそれすれすらも通り過ぎると、池の近くまで来た

奴はそのまままっすぐ進む


くそっ、結構足速いな!



「待てといっているだろう!」

「!?」



大声で叫んだ俺に、アイツはやっと振り返った

しかしアイツはこちらを見ても、きょとんとしているだけで何もいおうとはしない
いつもなら文句のひとつも言ってくるのに・・、おかしいな



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ゴールドはため息をつくと、いきなり走り出した


「あ」


ぼーとしていたせいか追いかけることを忘れる


その間、アイツはどんどんと俺から離れていった



「まっ、待て!」


俺はわれに返り、急いでゴールドの後を追いかけた















俺がアイツに追いついたのは、それから数時間たったときだった
周りの風景は木々に変わり、人の気配など全く感じさせない


そこでアイツはスピードをゆるめ、足を止めたんだ



俺はその腕を捕まえる
すると奴はびっくりしたように振り返り、俺を見た


そしてしばらく沈黙を突き通すと、こう言った



「・・・・・お前、誰?」



・・・・はあ?























「・・・・なるほどね〜、それで俺についてきちゃったわけか。意外とうっかりやさんだな〜、シルバー先輩は」



目の前にはニコニコと笑う男
名をハートというらしい


ハートはこの春入学してきた一年生らしく、今日はちょっと森に用があったからこの連休を使って来たらしい


それを俺がたまたま見かけて、ゴールドと間違え、ついてきてしまった・・
要約するとそんなとこだ




にしても本当にそっくりだな
ここまで似なくても良いだろうに・・・
おかげでゴールドじゃないと分かっていてもなんとなく不愉快だ

特に笑われたりすると・・・、ちっ、むかむかする



「そ〜んな怖い顔しないでよ!シルバー先輩!俺はその・・、ゴールド?先輩とは違うんだからさ」



無表情で俺がにらんでいると、ハートはその視線に気づいたのか、けたけたと笑いながら俺に言ってきた
ああ・・、笑い方まで似ている・・・、ここまでそっくりだとほんと嫌気がするな
さっさと寮に帰って寝よう・・
それが一番だ


「あれ?何処行くんですか?」



無言で立ち上がった俺に、ハートが声をかけた
まるでその行動を予測していなかったみたいに



「帰るんだ、ここに居る理由がないからな」



俺はきょとんとこちらを見ているハートにそうこたえた


そうだ
帰るんだ

ただでさえ寮で毎日この顔を見ているというのに、これ以上みる理由がない


だいいち、こいつだって俺にかまう理由はないはずだ
なのになぜわざわざ声をかける?


分からない・・
こいつらみたいな人種は本当に分からない


せめて俺にかかわってくれなければいいものを・・
なぜわざわざかかわってくるんだ!



「帰る?今からですか?やめたほうがいいですよ、もうすぐ夜ですし・・・、それに、シルバー先輩、ここが何処だか分かるんですか?」


立ち上がりかえろうとする俺に、ハートは不可解そうに目線を向け、そういった


俺はその言葉に足を止める



そういわれれば・・・、ここが何処だかも分かっていない
第一・・、俺は一体どの方向から来たんだ?




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


俺は黙ってその場に座る


するとハートはおかしそうにぷっと噴出し、くすくすと笑いながら、俺を見た
その表情はどこか安心したようでもあった・・

一体、何に安心したのだろうか・・・、俺とこいつは何のかかわりもないただの他人なのに・・・


まあ、俺にとったら、とても他人とは思えないんだが・・・




「・・・ふふっ、ねえ、シルバー先輩」


ハートは一通り笑った終わった後、ふと口を開いた



「ソウルって奴、知ってます?」



そういったハートの表情は、とても穏やかで、優しい顔をしている



俺は思わずドキッとする



この表情・・・、誰かに似ている・・・・・・、ああ・・・・、そっか・・・・、姉さんが、姉さんが笑ったときに似てるんだ・・・






「ソウルっていうのは俺の心友で、とっても優しい奴なんですよ、シルバー先輩みたいにね」


ハートは子供のように無邪気に笑い、俺に向かってそう言った


「・・・は?」


俺は驚きの声をあげる


優しい?
この俺が?



「・・・!すみません、正確には、そのゴールド先輩という人に優しい、ですね」


はあ?
俺がゴールドにだと!?



「分からんな、なぜお前はそう思うんだ」


「だって・・、俺を見つめるその瞳が、とっても優しそうだから・・」


俺が不満げにそう言えば、ハートはにっこりと笑い、有無を言わさぬ目でそういった




・・・・・・・分からん
なんなんだこいつは!




「・・・・・お前、馬鹿なのか?」

「はは、少なくとも、シルバー先輩よりは頭いいと思いますよ」



ぴく


俺はその言葉に少し、眉を吊り上げた



「だって・・・、俺・・・・・、いえ、やっぱりやめておきましょう」


眉を吊り上げる俺を見て、ハートは何か言おうとする
しかし、途中でやめてしまった



「今日はもう寝ましょう、夜も遅いことですし」



ハートはさっきの言葉をごまかすように、空を指しながらそういった
確かにもうあたりは暗いし、星もでている

ここは素直に聞いておいたほうがいいのか?
しかし俺はどうもこいつを好かない

こんな奴の言うことを聞くなんて死んでもいやだ



「・・・・・・・・・・・・・・・・」



俺は動こうとしない
しかしハートは何も言わない


それどころか、自分の分だけ寝袋をさっさと用意すると、こちらを見て、まるで馬鹿にするように言った




「夜は冷えますよ?それに・・・この辺には毒蛇が居ますし・・・、かまれると、まあ間違いなく死にますね。俺には関係ねーけど」



「・・・・黙れ」

俺はにらみをきかせてそういった
とてもとても、低い声だった

自分でもびっくりしたぐらいに



「!!」


ハートは驚いたように目を見開くと、ふっ、と笑い

「へえー・・、ソウルとは、違うんだ」
と言った



「当たり前だ。俺は、俺でしかないんだからな」

「確かに」


くすくすと笑いながら言うと、ハートはこちらに手を伸ばしてくる



「!!」


そっと左ほほに触れる感触


こいつ・・、結構体温低いな・・・




「ねえシルバー先輩。時には、素直になることも大切ですよ?じゃなきゃ・・・ミヲホロボシマスカラ」



最後は、音のない声だった



俺はその声にぞくっとする



こいつ・・、ゴールドと違う


恐い

本能的にそう感じた



「じゃあ、寝ましょうか?」


「・・・わかっ、た・・・」



今度は素直にうなずいた


ハートはふふっと笑い、いい子、と言って、俺の頭を撫でた



今度は、音のある声だった






























あれから数日後

俺はしばらく山の中にこもった
というか付き合わされた



今は山を降りてきて、ハートとわかれるとこ



「じゃあ、またね、シルバー先輩」


ハートはバイバイ、と手を振り、振り返って帰ろうとした


「あ」


しかし、途中で足を止め、こちらを振り返り、こう言った



「先輩、最後に質問です。・・・・金と銀・・・・混ぜたら何色になると思いますか?」



「・・・・・・・知らん」


「正解は・・・・・ありません。なんでか分かりますか?」


「・・・・・・・・・」


俺は黙ってしまった


すると、ハートは、にこっと、笑い




「だって、どっちも綺麗ですから!混ぜることなんて出来ませんよ!」



と、とびっきりの笑顔で言った




「それじゃ、シルバー先輩、お元気で!自分と、あの人の色を大切に!」






「・・・・ああ」





最後は素直にうなずく


今思い返すと
本当に、とんだ数日だった




だが・・・・・




「たまには、こんな日もいいかもな」


声に出した言葉は、風にのって、空高くへと消えた







END