『終電時刻』
いつも同じ時間、夜の十二時過ぎごろ、彼を見かける。
彼はいつも同じ場所に座り、イヤホンで音楽を聴いていた。
きっとこちらには気づいていないんだと思う。
何しろ反対側のホームなのだから。
気づいていないのが当たり前。
しかし俺はいつもこの反対側のホームから彼を見るのが日課。
たまたま見かけたその日から、なんとなく週間になってしまい今日にいたる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・?」
今日も居るだろうと思いながらホームに行けば、いつもの位置にいつもの彼が居なかった。
そのかわりこちら側の椅子にイヤホンが一つ。
俺はそれをおもむろに手に取った。
イヤホンにしたら珍しい金色。
輝くばかりの金に少しめまいがした。
誰のだろう、と思いひっくり返せば、イヤホンの裏に文字らしきものを見つける。
あまりに汚くて読めなかったが、なんとなくG、O、L、D、の文字が書いてある気がする。
「おーい!ごめん!それ俺の!!」
いきなり後ろから声をかけられ、びくっと肩が震える。
振り向くといつもの彼がそこに居た。
一体どうして、そう考えるより先に彼が俺の目の前に来る。
「ごめん!駅のホームに置き忘れちゃって・・・、えっと、拾ってくれたのか?」
「あっ、ああ・・・」
戸惑いがちにそうたずねられれば、上ずった声しかでず、自分でも後悔した。
ああ!一体何をしているんだ俺は!
「サンキュ!・・・・・・・・・あのさ、よく、ここのホームに居るよな?家遠いの?」
「!」
彼から出たその言葉に若干驚く。
そっか、彼も俺の存在に気づいていたのか。
そして覚えていてくれた。・・・・・・・・・なんだかこそばゆい気分。
「まあな・・・・、お前も、だろ?」
そう聞けば彼はゆっくりうなずいた。
そして言いにくそうに瞳をしたに向けるとちらっと俺を見て、顔を赤らめた。
そして恥ずかしそうに口を開いた彼は、何処と無く早口に聞こえる。
「あの、俺さ、本当はずっと前からお前のこと見てて、それで、なんかつい電車の時間をあわせちまったりしてさ、
自分でもわかんないんだけど、お前のこと見てると、ドキドキするんだ・・・」
・・・・・・・・思考停止。
今、なんていった?
「きょっ、今日もわざとイヤホン置いてみたりしてなんとか接点が出来ないかって思ってたんだ!
その、俺、こんなこというのもなんなんだけど、お前のこと好きになっちまったんだ!」
「っ!?」
そういわれてまた思考がショートしそうになったが、今度は大丈夫。
ちゃんと意識を定めた。
しかしそのかわりに顔にみるみるうちに熱が集まっていく。
だんだんとはずかしくなり、ついには俺も下を向いてしまった。
「・・・・・・・・やっぱ、気持ち悪いよな、ごめん・・・」
それを否定と勘違いしたのか、彼はそういうとその場から立ち去ろうとする。
その顔は泣きそうだった。
「・・・・っ!待て!」
とっさに腕を掴み、彼の動きを止めた。
しかしそこからどうすることも出来ずただ時間ばかりが過ぎていく。
プォーン・・・・
ホームに電車が入ってき、そしてまた出て行く。
俺はそこでやっと決心をした。
彼をこちらに向かせ、しっかりとその目を見つめる。
その瞳は金色の瞳をしており、ああ、俺とは正反対だな、なんて考えてみたりする。
「さっきので終電を逃してしまった。責任、取ってくれるだろう?」
いまだ状況を飲み込めずぽかんとこちらをみつめている彼に触れるだけのキスを落とす。
さあ、物語はここから始まる。
END
(なっ、何すんだよ!)
(お前ゴールドって言うのか、俺はシルバーだ、よろしくな)
(おうよろしく・・・ってそうじゃねーだろ!!!)