『幸せ=不幸』



「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」



部屋になんともいえない沈黙が流れる。
ここは俺の部屋のはずなのに、見慣れない顔が二つ
一人はこちらを見つめており、もう一人は眠いのかもう一方に体を預け眠っている。


俺の目の前でニコニコと微笑む男の名はハート。
俺がゴールドと間違えたのがきっかけで、なんやかんやあり、知り合いになった。
ゴールドも不愉快そうに奴を睨んでいるところ、知り合いなんだろうか・・・。



「おい、なんでお前がここにいんだよ!」


先ほどまで黙っていたが、ついにこの沈黙に耐えられなくなったのかゴールドが問う。
その少し怒りが含まれた声に、全くびびりもせず、ニコニコと笑顔を崩さず、ハートは問いに答えた。



「なんでって・・・・、さっきも言ったじゃないですか。俺たちの部屋が壊れちゃったから、お邪魔させ
てほしい、と・・・・・」

「俺が聞きたいのはそういうことじゃなくて、なんで俺の部屋に来るか、だ!!」


バンッ!とテーブルを叩き、声を荒上げる。
しかしそれにも全くびびった様子はなく、それどころか、それで少し身じろぎ、眠たそうに瞳をこするソ ウルの頭を撫でた。



「どうしたの・・?」
「ん、なんでもないよ。ソウルは寝てろよ。な?」
「んー・・・・・・」



よほど眠いのかそのまま再び眠りにつくソウル。
その姿は、俺にそっくりなので、見てて吐き気がする。
少し甘えたようにだす甲高い声だとか、しぐさにも原因はあるのだろうが、一番の原因はこれだ。

俺がゴールドに甘えているみたいで気持ちが悪い。
それしかないと思う。



「・・・・・・・・・・知ってはいたけど、なんか・・・・気持ち悪いな」



ゴールドも同じことを考えているらしい。
しかし、最初会ったときに驚かなかったことから、こいつは知っていたのだと思う。
ソウルという俺にそっくりな奴が居ることを

ちなみに俺は今日はじめて知った。

前からソウルという名前の友達が、ハートに居ることは知っていたのだが・・・
ここまでそっくりだとは思わなかった。
自分にそっくりだとは聞いていたが、ここまで似ていると驚きを通り越して、気持ち悪くなってくる。
鏡が常に目の前にある気分だ。



「・・・・・・・・・ハート、だよな?」



ふぅとため息をつくゴールド。自分を落ち着かせるようにそう聞けば、はいと答えるハート。
俺はそれを横目で見ながら、目の前で寝ているソウルに自然と目がいった。



気持ちよさそうに寝ている。
決してバランスがいいわけではないのに、安心しきった笑顔で寝ている。
何がそんなに安心できるのだろうか。
人のそばこそ危うくて、危険なものは無いのに・・・。
彼はそんなにハートのそばが安心できるのだろうか。
不安は感じないのだろうか。
いつもそばに居ても、自分をずっと見ていることは無い。
心奪われるだけで無駄だ。
知らないうちに心の奥深くに入ってくるくせに、決して自分は心を見せない。隙を見せない。
しかしそれは同じこと。
騙し、騙され、奪い、奪われ、生きているんではないのだろうか。
人間とはそういうものじゃないだろうか。
常に、不安、憎しみ、嫉妬、嫌悪感を感じ、それをぶつける。
そんなものを見せるぐらいなら、最初からなにも考えないほうが楽なのに・・・、それすらも出来ない。
自分は臆病者なんだろうか。
それともただの偽善だろうか。
どちらにしろ、いいもので無いことには変わりない。



「おい!シルバー!聞いてんのか!?」


いつの間にかゴールドの顔がすぐそばにあり、その声に一気に現実に引き戻される。
ああ、そういえば、ハートたちもいたんだっけな。



「なんかしんねーけど、ソウルが眠たそうだから今日泊めさせてくれって!どうする?」



どうすると問われても困る。
はっきり言ってこれ以上厄介の種が増えるのは勘弁だ。
しかしとういうことはハートの頼みを断るという形になってくるのだろう。
だとすると後が怖い。
こいつは何を考えているかわからない。
人間というにはあまりにも遠く、かといって化け物というわけでもない。
さしずめその中間あたりとでもいうのだろうか。
とにかく得体の知れないものに恐怖をかんじるものだ、人間というのは。



「別に俺は泊めてくれなくてもいいですよ〜。まあ、その後あなた方に何があろうと、一切責任は取りま
せんから」


くすくすと楽しそうに笑うハートはひどく印象的だった。
一度見たら忘れられない顔、ゴールドとは別の意味で俺の目をひきつける。
ああ、なんて厄介なんだろう。
本当にこの種族は!



「俺的には泊まってくれないほうが良いんだけどよ!」

「そうですか、では・・・」


怪しく笑いゴールドに手を伸ばそうとする。

しかし、ゴールドがそれを避ける前に、彼の動きは止まった。



「・・・・駄目だろ、シナリオ通りじゃないのも、人生だからな・・」


みるとしっかりと彼の動きをさっきまで寝ていたはずの人物が止めていた。
ハートはふぅっとため息をつき、ソウルの頭を撫でる。


「ん〜・・・・」


ソウルはその行為に気持ちよさそうに目を細めると、すやすやとまた眠りの世界に旅立ってしまった。




「ソウルがやめろっていうので、別の方法をとることにします。・・・・・そうだ、俺から貴方達に何か
素敵なものでもプレゼントしましょうか?何でもいいですよ。あなた方が望むなら」



今度は優しく微笑みかけ、俺たち二人を見つめる。
こうやって見ると良くハートも表情が変わる奴だと思う。
その彼の表情には笑顔のレパートリーしかないのだろうけど。

隣で不思議そうに彼を見つめる馬鹿は、色々とレパートリーがありそうだ。
まっ、もっとも、興味すらないのだが。




「・・・・・なんでも?だったら、幸せでもプレゼントしてくれよ」


挑発的に笑いながら、ゴールドは言った。
ふむ・・・と少し悩むように相槌をうつと、今度はその瞳が俺に向けられた。



「シルバー先輩は?シルバー先輩はどうします?」

「・・・・・・・・俺か、そうだな・・・」


もし本当に何でも叶うというならば、孤独がほしい。
この世界に自分のほか何も居なければ、惑わされることも無い。囚われることも無い
そんな世界、幸せとは呼べぬだろうが、俺にとって幸福なことに変わりない。
相手が居て初めて幸せが出来る。
しかし相手が居て初めて不幸も出来るのだ。
そんな矛盾
俺には必要ない




「・・・・・・・特に、何も無い」

「じゃあ、ゴールド先輩と同じで良いですか?」


そう言えばまるで分かってたかのようにすぐに返ってくる返事。


幸せか・・・・
しかし、同時にそれは不幸さえもプレゼントしてしまうことになる。
お前はどうするつもりなんだ?
ハート



「よしっ!じゃあ俺からは二人に幸せをプレゼントすることにします。なので代わりにあなた達は俺達に
部屋を提供してください。明日まででいいので」



ぐっとこぶしを握りこみ、自信満々の顔をつくるハート。
その顔には俺に不可能は無い!と書かれているかのようだ。



「それじゃあ楽しみにしててくださいね!」



にっと笑うハートの顔が、ゴールドとかぶる。
それがひどく愛しく思えた。


「幸せなんて、ありゃしないさ」


ぼそっ呟けは、その言葉にゴールドが反応し、俺にも幸せなんてありゃしないね、といった。



だって俺らの幸せは、君が居ること。
だけど俺らの不幸も、君が居ることなんだ。



ほら、幸せなんて手に入れられやしないだろう?
見つけた先にはきっと不幸
奪い奪われ落ちていく、不幸しかありはしないんだ。




「・・・・・・・・・・幸せ=不幸=幸せ」



ぼそっと寝ているはずのソウルが呟いた。
ハートは優しく微笑み、そうだなと言った。






幸せ=不幸
きっとその原理は、俺達だけに通じること






END