『大人になれなかったから』


昔々の話。
この村の北東にある湖には、人魚が居ると信じられていた。
子供達は学校から帰るなり、みんなで人魚を探しに行ったそうな。
しかし見つかるはずはなく、いつしか忘れ去られてしまった。
丁度どそれは、今から五十年前の話だ。
今じゃすっかり村は都会になり、高層ビルが立ち並んでいる。
北東にあった湖は埋め立てられ、公園とかしていた。
この町に住む子供達は、そこに集まっては遊んだ。
その公園にある大きな木が大好きだったからだ。
だけど二週間前ほどから、ぷつりとひと足が途絶えてしまった。
それはこんな噂がたったからだ。
『北東にある公園に大きな木があるだろう?あそこには化け物がすんでいるんだって!』
その事実を確かめるべく、町の少年グリーンは、一人で大きな木を目指していた。
化け物なんて非科学的なこと、あるはずが無い。
それにあの木はみんなのものだ!
化け物なんかに奪われてたまるか!
その思いを胸に、少年は木の前に立ち向かうのであった。


「・・・・居るなら出て来い!化け物め!」


そう叫んでもいっこうに出てくる気配は無い。
すでに一時間がたった。
やっぱりただの噂かと半ば諦めかけたその時、ふと木の上から悲しそうな、なんともいえない声がした。



「・・・化け物って?このきのこと?」


見ると木の天辺に自分と同い年ぐらいの小さな子供が居るじゃないか。
グリーンは目を丸くさせて、じっと彼を見つめた。
彼は一瞬とおくのほうを見ると、何かを決心したように拳を握り、グリーンの前に舞い降りた。
あんな高いところから降りてきたのに、物音一つせず、それはそれは優雅な姿だった。
顔を上げた彼の赤い目は、悲しみに満ちていて、どうしてだろうと、グリーンは考える。


「・・・・・・この木が、嫌い・・?」


彼はそう小さく言葉を漏らした。
グリーンははっとなったように彼を見、静かに首を振った。
すると不思議そうに首をかしげる少年。
理解できなかったのかと、今度ははっきりと言葉で言うことにした。


「嫌いじゃない。もしろ、大好きだ」


それでも彼の表情は変わらなかった。
下を向いて石を蹴ってみたり、空を見上げて何かを掴むしぐさをしたり。
まるでこちらのことなど目に入っていない。
さすがにむっとして、怒鳴りつけようと思ったが、いきなり少年がこちらを振り返って、それは叶わなかった。


「化け物って?」


どうやら彼が理解できなかったのはこの木が好きか嫌いかではなく、好きならどうして化け物と呼ぶのか。
そういうことだったらしい。
グリーンはとんでもないと首を横に振る。
そしてまたはっきりと自分の気持ちを伝える。
すると彼はやっと嬉しそうに笑い、またすぐに悲しそうな顔をした。
どうしてそんなに悲しそうなのかと聞けば、君は聞かないほうがいいと首を振った。


「聞かないほうがいいよ。この木が好きならね」

「・・・・っ!お前、化け物のこと何か知っているのか!?」


彼の態度からそう理解し、がっと胸元を掴みあげる。
じっとこちらを見つめてくる赤い瞳は、まだ悲しそうにゆれている。
その時なんだか嫌な予感がした。
だけど真実が知りたくて、グリーンはさらに追求する。
赤い瞳の少年は、やっと口を開いた。


「・・・・化け物は、居ない。俺が流した噂だからね」

「なんでそんな噂を!」

「切られるからさ、この木が」


その信じられない言葉に、グリーンはがくっとその場に崩れ落ちた。
大好きなこの木が切られる・・?
そんなの嘘だ!!
きっと少年を睨みつけるが、表情は変わらず、それが嘘じゃないということが分かる。
彼はさらにこう言葉を続けた。

どうやらこの町のお偉いさんが、この木を切って資源にするんだって。
こんだけ大きければ確かに資源に向いているもんね。
俺もこの木大好きだからさ、切られたくなくて、化け物が住んでいるって噂を流せば、この場所に誰も近寄らないかなって。
でも、やっぱり大人にはきかないね。

彼が悲しそうなわけがやっと分かって、グリーンは急に恥ずかしくなった。
そうとは知らず彼に八つ当たりして・・・、彼はこの木を守ろうとしたんじゃないか。
ぎゅっと拳を握り、立ち上がる。
そして彼を見つめ、俺も手伝うといった。


「・・・・・・ありがとう」


にっこりと笑い、でも大丈夫と言った。
奥の手を使うからと。
なんのことかと不思議に思ったが、その場に流れる空気が何もきくなといっており、その日は黙って帰った。
そして次の日やっぱり手伝おうと公園に行ってみれば、びしょぬれの彼がそこに居た。


「なっ、なにがあったんだ!?」

「・・・・ああ、君か。・・・う〜と、あのね、追い払ったよ。もうこの木、切られないよ」


鞄からタオルをだし、びしょぬれになった髪を拭いてやる。
するとその時、彼の髪の中に見慣れない耳見たいのがついていることに気づいた。


「・・・・・・これ、何?」

「・・・・・え、・・・・あっ!!」


ぱっと手で隠し、さっと顔をそむける。
しばらく黙りこんでいたが、何か決心したようにこちらをむくと、こう言った。


「・・・・・信じられないかもしれないけど、俺はもう五十年もここにいるんだ」

「・・・・はあ!?だって、俺と同い年ぐらい・・・」


どうみたってグリーンと同い年ぐらいに見える彼。
ぽつりぽつりと喋りだした彼によれば、自分の名前はレッドといい、昔ここには湖があったと。
そこでみんなと一緒に人魚探しに出かけた。
その時たまたま誤って湖に落ちてしまい、おぼれた自分を人魚が助けてくれた。
でも酷い怪我だったらしく、人魚は俺に自分の血を飲ませた。
そこで自分は不死のからだになり、見事怪我は治った。
だけどそれから年はとらなくなり、ずっとこの姿のままだと。
死にもしないし、自殺も出来ない。
体にはうろことかひれとかが生えているし、普通の友達も出来ない。
一人ぼっちだと。
血をくれた人魚はそのせいで弱って、数年前死んでしまった。
その人魚のことはうらんでいないけど、一人にして欲しくなかった。
そんな時、ふとこの木に登ってみたんだ。
そしたら凄く自分がちっぽけに見えて、この木に登るのが好きになった。
唯一一人だと感じない瞬間。
だから昨日この姿を見せて、大人達を驚かせた。
みんなびびって逃げたったよ。
俺は化け物だからね。
そういうかれは寂しそうで、思わずグリーンは抱きしめていた。
彼はとても驚いており、離れようとした。
だけど離さない。
ぎゅっと抱きしめ、
「大丈夫。一人じゃない。俺は、この木を守ってくれた君が好きだよ」
と言った。
ポロリと涙が流れる。
ぽろぽろぽろ涙が止まらず、彼もグリーンを抱きしめ返した。
「ありがとう・・・・」
と呟いて。



END



後書き
お題九発目です!
このお題シリーズ、お持ちかえり可能のフリー小説ですので!
お好きなのをどうぞ。
勿論全部でもいっ・・・・・・・・、こほん、失礼しました。
あ、このお題を持ち帰るときについての注意点なのですが、このお題はお題屋さんから借りたもの
なので、お題の二次配布はしないでね!勿論小説も!
そして自作発言禁止!
あと文だけ持ち帰ってね♪
ここに直接飛ぶようにしないでね♪
それでは、引き続きお題をお楽しみください。
*持ち帰る人は一言ください! ・・・・・それと、これ、途中で飽きたので、かなり文がぐだぐだですみません!