人がもし現実世界となんら変わりない夢を見たとするなら・・・・・、人はそれを夢だと気づけると思うかい?
『夢現世界』
「・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿馬鹿しい」
朝起きて一言目に出たのがそれだった。
向かいで朝食を食べていたゴールドは、はぁ?という表情になる。
なんだよてめーと言いかけて、奴はそれをやめた。
おそらく朝という時間を得意としていないからであろう。
かくいう俺も、朝はあまり得意じゃない。
そのおかげか、朝は比較的平和な時間が流れる。
互いに無駄な労力を使うぐらいなら、寝たほうがマシと考えているからだ。
「はぁー、ごちそうさん。朝食は美味しいけど、てめーと食べると最悪だな」
そういいガチャガチャと食器をキッチンへ運んでいくゴールド。
その後姿を見て、その朝食は俺がつくったものなのだがとひそかに思う。
第一こうやって一緒に朝食を食べること自体稀だ。
俺達の起きる時間が重なることなど、滅多にないからな。
一方が早かったり、遅かったり。
たまに顔を合わせたと思ったらもう出るところだったり。
とにかく、一緒に朝食をとるなど、一ヶ月にあるか無いかぐらいなんだ。
それなのに最悪といわれては少し気分が悪い。
・・・・・・・・・ああ、だからこそ最悪なのか。
普段と比べてしまうから。
「寝起きのてめーはほんっと気持ち悪いな!」
いつの間に戻ってきたのか、制服に着替えたゴールドが目の前に座っている。
そういえば、朝食こそは一緒にとらないが、朝登校する時間は毎日と言っていいほどに同じだな。
もう先に行っただろうと思っていても、何故かこいつは玄関に居て、遅いと不機嫌そうに言うんだ。
朝だから反論する気にもなれず、そのまま成り行きで一緒に学校まで行っている。
しかしごくごく普通に歩いて、というわけではなく、いつだって全力疾走なのだが。
何故か。
それは第一に遅刻しているからと、俺達が負けず嫌いだからだろう。
こちらが歩くペースを速めると、向こうも歩くペースを速める。
それでまたこっちが・・・・・、とやっていくうちに、自然と走っているのだ。
不思議な話だな。
ほぼ毎日やっているからか、校内名物とされている。
迷惑な話だ。
しかしかといっていつも二人で登校しているかといわれれば、それは違う。
たまに俺が先に行ったり、奴が待っていなかったりもするわけだ。
それに奴が待っている場所も毎日同じというわけではない。
寮のロビーだったり玄関だったり、自分の部屋だったり。
まあ、一番回数が多いのはロビーだが。
たまに、本当に極まれに、俺が食べ終わるのを目の前で待っていたりもする。
今みたいに。
「・・・・・・・・・・・行かないのか?」
「んー?・・・・・あー、まあ、どうせ遅刻だしよ。クリスに怒られるなら仲間?っつーか、同士?みたいなのが居た方がいいだろ」
「俺は生け贄かなにかか」
ちょうど朝食を食べ終わり、ご馳走様と手を合わせる。
さきほどいい忘れていたが、何も一緒に行くからと必ず走るわけではない。
たまにのんびり歩いていったりもする。
だいたい十回中一回の割合で。
ちなみにこれは余談なのだが、一緒に行かない日は月に二、三回の割合だ。
「さっさと着替えろよな」
「・・・・・・・お前に言われる筋合いはない」
部屋に入ってのろのろと着替えをする。
やっぱり寝起きのせいかどうも頭が働かない。
いっその事このまま寝てしまおうか。
ふとそんな考えもよぎるが、それは無理だと溜息をついた。
そんな事をしたらクリスの説教が長くなることが目に見えている。
そして何よりあいつが許しはしない。
あいつの声は、ひどく頭に響くんだ。
だから俺は、朝からそんな面倒な喧嘩を起こすぐらいなら学校に行くことを選ぶだろう。
「終わったのか?」
「ああ、まあ、な」
「・・・・・・んだよ、その微妙な表情」
『別に』
そう呟いて、足早に部屋を出る。
ゴールドもその後を慌ててついてきた。
さっさと行ってしまう俺を不愉快に思ったのか、奴は不機嫌そうに叫んだ。
同時に俺の動きを止める。
「・・・・・なんだ」
「それはこっちの台詞だっつーの。・・・・・なんか怒ってんの?」
「お前こそ、今日は勝負しないんだな」
そういえばきょとんとした顔。
しばらく不思議そうに俺を見つめていたが、いきなりはっと噴出す。
にやにやとやたら嬉しそうに、『そうか、そんなに俺と勝負がしたかったのか』なんていい、終いには肩まで叩かれてしまう。
不愉快だ。
そう感じたが、否定するのも面倒なので肯定しといた。
すると今度は驚いた顔。
みるみるうちに顔が赤くなっていき、言葉にならない声を出す。
何がしたいんだと溜息一つ、また歩き出した。
「・・・・・まっ、まてっつーの!」
走って俺に近づき、一歩前を歩くゴールド。
それ以上は何もいわなかったが、なんとなくゴールドの心情が理解できた。
(なるほど、な)
少し意地の悪い笑みをこぼし、ばれないようにそっと近づいた。
後ろから一定のリズムでゆれる左腕を掴み、そのまま手へと移動させる。
奴は驚いたらしいのか、必死にはずそうとしていた。
しかし無駄だと分かったのか、数分もしないうちにやめてしまう。
「行くぞ」
「命令すんじゃねーよ!!」
いつもの道をいつもよりゆっくりめに。
おそらくこの調子だと着くのは三限目になりそうだ。
まあ、だがたまには悪くないんじゃないか?
「なんでてめーが此処にいんだよ!!」
「何処に居ようと俺の勝手だ」
昼。
朝と違って意識がはっきりしているおかげかゴールドと喧嘩することが多い。
今日だけで五回は喧嘩している。
そのうち二回はクリスに説教をくらったが。
・・・・・・・理由はなんだって?
そんなものはいちいち覚えていない。
何処にだって転がっているだろう。
こいつと喧嘩する理由なんて。
「ここは俺の場所なんだよ!!」
「先に座っていたのは俺だ」
「はっ、そんな事知るかよ!」
「・・・・・・・・・どーでもいいですけど、俺を挟んで喧嘩するのやめてくれません?」
「「ソウルは黙ってろ!」」
今まで黙ってケーキを食べていたソウルがふとそういった。
何故ソウルが此処にいるんだって?
それは此処が食堂のテラスであり丁度休み時間だからだろう。
今日は何故だか紅茶が飲みたくなり、この時間を使って食堂に来た。
いつも人気のテラスが珍しく開いているようだったので座った、のだが。
その後すぐにソウルが来て、『そこ、俺の場所です』というんだ。
先に座っていたのは俺だといったんだが、どうやら聞く耳持たないようで。
そのまま隣に腰をかけ今に至る。
勿論怒っても良かった、が、それよりもトレイにのせられている大量のケーキのほうが気になってしまった。
おかげで怒るタイミングを逃してしまって、帰る気もないようなので諦めたというわけだ。
「黙ってろって言われましてもねー、あなた達があまりにも五月蝿すぎるんですよ」
十二個目のケーキをぱくつきながら、つまらなそうにそういう。
むすっとしているゴールドにケーキを一つ渡し、オレンジジュースでいいですかと聞いた。
とたんに嬉しそうに笑い、にこにこと席に着く。
お前は犬かなんかか。
そう言いかけ、やめた。
ソウルがきっと睨んできたし、またよけいな喧嘩がおこりそうだったから。
おそらくゴールドが此処に来た理由は、ソウルとのお茶のためというところだろうし。
いつだったか、そうニコニコと話していたような気がしないでもない。
最近はソウルとお茶をするのが日課なのだと。
・・・・・・・だどしたら、邪魔なのはもしろ俺のほうなのだろうか。
「あーあ、今日はいつもの倍めんどくさそう・・・・・・」
フォークをくるくると回しながら、俺たち二人を見比べ溜息をつくソウル。
ゴールドはこいつのせいかと俺を指差してくる。
勿論違うと首を横にふられていたが、納得はしていないようだ。
絶対こいつだろーと言いながら、貰ったケーキを嬉しそうに食べる。
「馬鹿だな」
「・・・・・・んだとてめー、喧嘩売ってんのか!?」
つい出てしまった言葉にゴールドが反応する。
立ち上がって俺の胸倉を掴み、今にも殴りかかってきそうだ。
それを見ていたソウルは溜息をつき、どこかへと行ってしまった。
とめるものが居ないとなると、この喧嘩、長引きそうだ。
そう冷静に判断する俺と、目の前の男のことしか見えてない俺が居る。
どちらからはじめたのか壮絶な殴り合いが始まり、食堂に居た生徒達は巻き込まれぬよう避難する。
どれくらいやっていただろうか。
いきなり腕をつかまれ動きを止められる。
見るとそこにはハートが居て、その後ろにはソウルも居る。
呼びに行っていたのか。
にっこりと笑うハートを見て、冷や汗が流れた。
最初こそは暴れていたゴールドだけど、ハートの笑みを見て状況を理解したらしい。
サーと顔が青ざめていった。
「ちょっと暴れすぎですよ♪先輩」
そう言いぐっと掴んでいる手に力を入れ、また微笑んだ。
その瞬間軽々と体が浮き、そのまま屋上のほうへと投げられる。
空に飛ばされながら見たハートの顔は、とても満足げで、かなりむかついた。
しかし今の俺に何が出来よう。
「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」」
結局、大人しく飛ばされるしかないということだ。
ゴンッ!!
「・・・・・・・・・・・あいつ、ぜってぇー殺す」
「同感だな」
しばらくして屋上の床に打ち付けられた俺たちは、最初にそういった。
まあ所詮は負け犬の遠吠えだ。
本当にそういうことをしようと思っているわけではない。
第一、ハートに敵うわけが無いだろう。
1歳さとはいえ、俺たちを同時に屋上に吹っ飛ばす力の持ち主だ。
敵うはずが無いと思うのが普通だ。
「くそっ・・・・、闇討ちでもするか?」
「やめとけ、返り討ちにされるのがおちだ」
馬鹿なことを考えているゴールドをとめる。
奴も分かっていたのか、舌打ちをするとうるせーと言った。
そっぽを向いて俺を見ないようにする。
特にこちらも話すことがあるわけではないのでそのまま黙る。
空を見上げて雲の流れを目で追った。
そうしているうちにだんだんと青がオレンジに変わっていく。
もう夕方か。
そう思い、立ち上がって寮へ戻ろうとドアの方へ歩いていく。
「・・・・・・・・・?」
いつもならここでゴールドもついてくるのに、今日はどうしたことかそんな気配が無い。
仕方なく後ろを振り返れば、先ほどの体制のままで寝転がっている。
帰らないのかと近づけば、うるせぇ、先に行けとなんともぶっきらぼうな返事がかえってくる。
このまま蹴飛ばしてやりたい気持ちになったが、ふと思い当たること。
・・・・・・まさか、な。
「足でも痛めたのか?」
「っ・・・・・・!」
図星、か。
一瞬震えた体を見て、それがあっていることがわかる。
普通ならここは肩を支えたりして一緒に帰るのだろう。
しかしそれが俺とゴールドに出来ると思うか?
それ以前にやりたくも無い。
放っておいて帰ればいい。
俺には関係のない話なのだから。
だけどそんな考えとは裏腹に、俺の体は全く動こうとしない。
俺がこの男を気にかけていると?
そんな馬鹿な。
そんなこと、あるはずがない!
「帰るぞ!」
「うおっ!?」
思いどうりに動かない体と心にイライラしながら、ゴールドを抱き上げた。
放せと腕の中で暴れていたが、思うように動かなかったのか次第に抵抗は小さくなる。
そのまま人目のつかない道をとおり、寮へと向かう。
「・・・・・・・・・礼はいわねーからな」
「すきにしろ」
ぼそっとそう呟いた声に、俺もつくづく甘いと思った。
朝は成り行き。
では今は?
・・・・・・・・・・・・・どんなに抵抗したって、
結局はこいつと共に帰っている。
理由なんて無いはずなのに。
夜、部屋で静かに勉強。
リビングではテレビを見て笑っているゴールドの声がする。
イライラして集中できない。
もう今日は寝ようかとしたところでインターホンの音。
パタパタと廊下を走る音が聞こえ、ドアが開く音。
玄関で行われる会話のやりとりを聞いて、やっかいな人たちが来たと思った。
「やー!シルバー元気〜?」
「・・・・・・レッド先輩」
まもなく開かれた扉。
にこにこと笑うレッド先輩の後ろには、相変わらず無表情なグリーン先輩が居る。
妙に複雑そうな顔をしているゴールドも居て、また面倒なことが起こりそうだと溜息をついた。
「何の用ですか?」
「冷たいな〜、シルバーは。せっかく俺がいい案を持ってきてあげたというのに!」
全力で拒否させていただきたいんだが。
そう思った俺の心など伝わるはずが無く、レッド先輩はいそいそとなにかの準備をしている。
具体的に言えばベッドに枕を一つ追加し、枕元にランプを取り付け、そこにあった時計をぶち壊すというものだ。
嫌な予感しかしなかったが、逃げることも出来ないなので静かにその行動を見つめた。
しばらくしてよし、という声が聞こえ、レッド先輩は笑顔でこう言った。
「今日はここで寝ろ!ゴールド!」
「嫌に決まってんじゃないですか!」
何を言い出すんだこの人は。
はぁーとまた溜息をつき、必死に抵抗するゴールドを引っ張った。
そのまま哀れそうに見ていたグリーン先輩と、楽しそうなレッド先輩に一言、
「分かったので帰ってください」
とはっきりいい、その場をおさめる。
来た時と同様に二人は騒がしく帰っていき、ゴールドを突き放した。
「うわっ!?・・・・・・っ、てめー・・・!」
今にもキレだしそうだったが、冷静な俺を見て馬鹿馬鹿しいと思ったらしい。
言いかけた言葉を飲み込み、そのままベッドへと移動した。
「あー!最悪だ!」
俺も机の上の勉強道具を片付け、ベッドへと移動した。
ぶつぶつと文句を言うゴールドを蹴飛ばし、寝ろと言いベッドへ入った。
蹴られたゴールドはかなり不満そうだったが、何も言わずにそのまま布団をかぶる。
「たっく、何でてめーなんかと。どうせならギャルに囲まれて寝たいぜ」
「理解できない思考回路だな」
うとうとと夢うつつで言った言葉。
おそらくこれにも何か反論をしてきたのだろうが、あいにく俺には聞こえない。
だんだんと意識が沈んでいくなか、ふと頭の隅に引っかかることがあった。
なんだこの違和感は。
凄く不愉快な・・・・・・、なんだこれは。
『人がもし現実世界となんら変わりない夢を見たとするなら・・・・・、人はそれを夢だと気づけると思うかい?』
頭の中にそう声が響き、何かが弾けた気がした。
ああ、そっか、そうだったんだ。
「・・・・・・んだよ、どうした?シルバー」
どうやら声に出ていたらしい。
ゴールドが不思議そうに聞いてくる。
俺は体を起こすと、部屋全体を見渡した。
「そうか、これは、夢だったんだ」
その瞬間辺りが光り、全てが消えていく。
あまりの眩しさに目をつぶり、光が治まるまで待った。
だんだんと辺りが暗くなっていき、恐る恐る目を開く。
するとそこにはいつもの光景、つまりさっきと同じ世界が広がっていたのだ。
ただ違うのは、隣にいたはずのゴールドはいなく、代わりにイエローさんがこちらを見下ろしていたことだろうか。
「おはよう。いい夢でも見れたかい?」
「・・・・・・・貴方だったんですね」
それだけで充分伝わったのか、そうだよと笑うイエローさん。
もう一度俺に同じ質問をし、じっと見つめてくる。
俺は天井を見上げ、先ほどの世界を思い出す。
・・・・・あれが、夢。
「・・・・・・・別に、いつもどおりの夢でしたよ」
「そう」
静かに笑ったイエローさんは、立ち上がり部屋の外へと出て行った。
遠くでドアの閉まる音が聞こえ、もしかしたらこれすらも夢なのかもしれないと思った。
「なんて、馬鹿馬鹿しい」
夢だろうが現実だろうが、俺には関係が無い話。
俺が居て、そしてアイツが居る。
その事実だけで充分だ。
・・・・・・・アイツとは誰だって?
そんなもの、知る必要が無い!
END
後書き
Thankyou1000Hit!
とういうことで、ちょっと遅かったですが1000Hitプチお祝い小説です。
祝うべきか随分悩みましたが、嬉しかったのでプチで祝うことにしました。
さて、ここで普段見てくださっているみなさまに、管理人からのお礼を。
コメントを残してくれた人ありがとー!
遠慮せずどんどんキリ番踏んでね!
拍手してくれた人ありがとー!
メッセージを残してくれた人に、管理人が話を送っちゃうぜ!
ただいま準備中だぜ!
あ、もちろんキリ番のコメントを残してくれた人にも!
掲示板については、まあ、あれは報告ようなので。
でも、感謝はしています!
パソコンの前で小躍りもしています!
ちなみに、この小説は一応1000Hitフリーです!
四月の終わりまでフリーなので!
・・・・・え、小説から祝ってる感がかんじられないって?
まあ、そこはスルーしてくれると嬉しいです。
えっと、プチなのと書きたいのが無かったからです。これしか。
では、みなさま本当にありがとうございました!
次はもっと糖度多めに出来たらいいなと思います!
2011年03月30日 管理人ここな