今日は一日中雨が降っていた。
外でやる授業は急遽取りやめになり、中でやるくだらない授業に変えられた。
そして授業が終わりみんなが下校する夕方ごろになっても雨はいっこうにやむ気配をみせなかった。
それは寮の中でも同じだ。
もうたいぶ夜遅くなったが、雨はやもうとしない。
しかし、俺はそんな事をきにする人間ではない。
ではなぜ雨について語るのかって?
それは・・・・・・



「・・・・・・・・いつまでそこに居るつもりだ?」

「雨が止むまで」


窓に張り付いている男に声をかければ先ほどと同じ返事が返ってくる。

寮に帰ってくるなりゴールドは、着替えもせずに熱心に窓の外を見つめた。
何をしているのかと聞けば、雨を見てると短い返事が返ってき
いつまでいるのかと聞けば、雨が止むまでと返ってくる。
しかも終いに面白いかと聞けば、面白くないと答えるではないか!
それだったら今すぐその行為をやめてほしい!
目障りで仕方が無い!


「ばっかだなー、シルバーちゃん。面白くなくても目的があるからやってんだよ」


そのことを声に出して伝えれば、また淡々と返事が返ってくる。
その間もゴールドは窓の外をみつめていた。

もともとこいつのことなんてほうっておけばいい。
気にすることも無いはず、なのに。
どこか本に集中できない自分がいることに気づき、イライラする。
第一、なぜ俺がゴールドごときで悩まされなければいけないんだ。
ああ、そうだ。
最初からこうすればよかったんだ。


「っうおっ!?」


窓に張り付いていたゴールドをソファーに引きずり落とした。
急だったからか、全く抵抗なしにこいつは落ちてくる。
しかもその際、背中が強く叩きつけられたらしく、こいつはものすごい顔で俺を睨んできた。


「何するんだよ!」

「鬱陶しかったからしたまでだ」


そう答え、俺は目の前の本に集中しようとする。
しかしその考えはゴールドの手に阻止される。

「ふざけんじゃねぇ!!」

俺の肩を掴み立ち上がる。
そしてそのまま前に向きを変えると、ストンとソファーに腰をおろし、ゴールドはぶつぶつと文句を言い始める。



「大体俺がこうなってんのもてめーのせいだっていうのに邪魔するんじゃねーよ!
せっかく人が大人しく今回は見逃してやろうと思ったのによ!それを邪魔するか!?
ありえねーよまじありえねー!てめーの存在その全てがありえない!!
さっさと自殺でも他殺でもいいから死んだほうが世の為だっつの!」

「その言葉、そっくりそのままお前に返す」


売り言葉に買い言葉、とはよく言ったものだ。
俺がそう返せばゴールドがまた文句を言い、俺もそれに反発する。
きっかけなんて何処にでも転がっているものだ。
このどちらからはじめたか分からない口論は、次第にヒートアップしていき、ついには殴り合いの喧嘩になる。
相手が拳を振れば、こちらも拳を振る。
相手が蹴るのなら、こちらも同じとこを蹴り返す。
そんなやりとりの繰り返し。
三十分ぐらいそれを続けると、ついにゴールドがおれた。



「・・・・もういいっつの。飽きた」

そういってそっぽを向いてしまったゴールドの顔は、奴らしくない表情で。
俺も握っていた拳をおろし、よせばいいのにそっとその黒髪に手を置いた。



「・・・・・・・・・・・・・何やってんだ」


手を左右に動かし黒髪を撫でた。
まるで子供をあやしているかのよう。
自分でやっておきながらその行動に気持ち悪くなる。
しかしまあ、後にも引けないのも事実。
ここは死ぬほど嫌だが前に進むしかないようだ。



「分からないのか?お前の頭は随分とかわいそうなんだな」

「そういうこといってんじゃねーよ!何でこんなことをしてるかって聞いてんだ!!」

「こんなことって?」

「だからっ!頭・・・・撫でたり・・・・・・して・・・・・」


からかうようにそういえば、だんだんと小さくなる奴の声。
下を向いてしまったその顔を覗けば、耳まで真っ赤だ。
どうやら奴にとってもこの空間はあまり心地の良いものじゃないらしい。
俺にとってもそういうものなので、当たり前といえば当たり前だが。



「・・・・・・・そうやって、中途半端に優しくするからよぉ・・・・。俺は・・・・」

消え入りそうなほど小さな声。
そのとき頬が濡れたように見えたのはけして気のせいじゃないと思う。

あやし方なんてしらないので、ただただそのまま手を動かした。
そしたら余計肩が震えだしたのはきっと気のせいだ。
お前が泣くなんてらしくない。
あやし方も知らない。
だから俺はただ見てみぬふりをする。
だからさっさと泣き止んでくれ!





『悲しみが溶けて水になり』



(そして涙に変わる)






END