『とろりと』



「えーと、次は弱火で煮詰めて・・・・」


なべから香るほのかに甘い香り。
チョコレート独特の匂いだ。
何故僕が今こんなことをしているかというと、もうすぐバレンタインデーというものがあるからだ。
本来なら他の人たちの観察をして楽しみたいところだけど、たまには作るのも悪くないかなと。
だからチョコレート作りに挑戦。
味は大人なビター。
甘いだけがバレンタインなんて、つまらないでしょ?
だから時には苦さも必要かと。
出来上がったものを頭に浮かべ、くすりと笑った。
基本中の基本の型に流し込むものだけど、そのでかさは半端ない。
これを食べる人は大変だろう。
・・・・・僕?勿論食べないよ。
犠牲者は他にってね。


「次は・・・・、型に入れて冷蔵庫でよく冷やすっと」


とろりととけたチョコレートを味見して、いい出来だと思った。
これならなんとかなりそう。
こんなにでかい型なんだもの。
チョコレートがなかなか溶けなくてね、焦がさずに溶かすのは大変だね。
まあでもなんとかなったし。
次はこぼさないように冷蔵庫に入れなきゃ。


「ふふ、楽しみだな」


おもいのほか楽しんでいる自分自身に笑みがこぼれる。
とろりと溶けた甘いチョコレートのようにはいかないけれど、たまにはこんな甘い日も悪くない。
ほら、僕だって女の子ですから!
・・・・・・・、ん?渡す相手は誰だって?
それは、聞かないほうが、身のためじゃない?




END

イエロー