『怪の路』


ここは、妖怪たちが住む国、『那異渡出火瑠』(ナイトデビル)



那異渡出火瑠には、様々な妖怪たちの頂点にたつもの、『王族』と呼ばれるものがおり、この国の政治を今日も元気に収めていた。


そう・・・、こんな風に・・・



「政治なんてかったるいわねー、もう適当でいいんじゃない?税金百万円とか」

「それはさすがにまずいですよー、八十万円ぐらいが妥当じゃないですか?」

「いや、それもまずいと思う」

「じゃあ九十万?」

「上がってるし!」


このめちゃくちゃなことを言ってる三人、王族長女のブルーと、五男のハート、六男のソウルは、ただいま税金会議の真っ最中。


長女のブルーがホワイトボードに案を書き出していき、それをハートとソウルがまとめる・・、はずだったのに
何故かソウルがホワイトボードの前に立っており、それをハートが一番後ろの席でぼーとみており、ブルーにいたっては帰りの準備をしている


「あの・・、ブルーさん、聞いてますか・・?」


それを見かねたソウルは声をかけるが、ブルーはにっこりと笑い
「全然♪」
と言ってのけた


「は〜・・・・・・」

思わずため息をつくソウル


ハートはそれを見てけらけらっと笑い、ピクンと頭についている大きな耳を動かしてこう言った



「もういいじゃん!税金会議なんてっ!それにゴールド兄ちゃん達が帰ってきたみたいだし!」


狼男のハートならではの技だ


彼はよく耳を立て、周囲の音に耳を澄ませている
おかげで、数十メートル先の音まで拾えるらしい
今回もそのケースだろう




「足音でもひろったのか?」
「うん!」


ソウルの問いかけに、元気良く答えるハート



ハートはニコニコとし、おそらく後数分後に開くであろう扉を見つめる
それをなんとなく不愉快に思うソウルは、不機嫌そうに彼を眺めていた



「さてと!」


ブルーは面白そうに二人を眺めた後、バンッと机をたたき、二人の注目を集めた

ブルーの方を振り返った二人は、じっとブルーを見て、次の言葉を待つ


「こういう時は、さっさと魔法で決めちゃいましょうか!」

「賛成〜!」

「てか最初からそうすればよかったんじゃ・・・」


陽気に言ったブルーに、すぐさま賛成するハート
一人ツッコミを入れるソウル



どうやら魔女のブルーの力で、税金問題は解決しそうだ




しかし、まだまだほかにも難問は残っている


例えば・・・



「そういえばゴールド兄ちゃん達、ちゃんと妖怪取締り法にもとづいて、妖怪取締りできたかな〜」

「いや・・、たぶん出来てないと思う」

「二人とも意地っ張りだからね〜、いろんな意味で♪」


そう・・・、三男のシルバーと、四男のゴールドが出かけた妖怪取調べ、これが問題なのだ



妖怪取調べとは、いわゆる警察みたいなもので、悪いことをしている人が居ないかどうか町をパトロールする仕事である。

もし悪いことをしている人がいたら、妖怪取調べ法という法律に基づいて、その人を裁かなくてはならない

ただでさえ手順が難しい法律なのに、シルバーとゴールドの仲の悪さといったらそりゃもう上限がないほどで、毎日顔をあわすたびに喧嘩しているぐらいだ


こんな二人が当然仲良く仕事できるはずもなく、毎回失敗に終わっている、というわけだ



「やっぱ俺らが行った方がよかったんじゃね?」

「まあそういうなよハート・・・、シルバー兄さん達も頑張ってるんだからさ」


眉をひそめて言うハートに、ソウルがストッパーをかける



ハートはゴールドとまったく同じ妖怪のため、ずいぶん前からソウルと二人で俺らが替わりに行くと、言っていたのだが
ソウルもシルバーと同じ妖怪のため、まったく支障はないのだが(もしろ二人のほうが仲が良いからいいぐらいなのに)何故かみんなが許してくれない
長女のブルーによれば・・・


『だってそっちのほうが面白いじゃない』
・・・だそうだ



「面白いってなーって感じだよな!」

「はいはい」


いまだに文句を言い続けているハートを適当になだめるソウル



そうしている間に、取り締まりに出かけていたゴールドたちが帰ってきた



「たっだいまー!」

「お帰り兄ちゃん」


勢いよく扉を開けたゴールドに、若干不機嫌そうに挨拶するハート


ゴールドはハートが不機嫌な理由がわからず、不思議そうに首をかしげる


「ただいま、姉さん達」

「お帰り、シルバー」


「お帰り、シルバー兄さん」



そんなゴールドの後ろにいたシルバーは、ゴールドの後ろから挨拶をする

ブルーとソウルが受け答えをし、シルバーは黙ってハートの席の隣についた



「今日はどうだった?」

「またあの馬鹿が暴れやがった」

「そか・・・」


隣に座ったシルバーに、それとなく結果を聞くハート

シルバーの答えにがっかりしながらも、ま、こんなもんか、と、自分を納得させた


「ゴールド兄さん、座らないの?」


いつまでもぼ〜とこちらを見ているゴールドに、ソウルが声をかける

ゴールドは一瞬驚いたような顔をした後、「あっ、ああ・・、そうだな・・・」と、どこかぼーとしたような声で言って、ハートの向かいの席に座った



「・・・・・・・・・・」


その様子をじ〜と見つめるハート

そして、軽く座ってたいすを傾けると、ゴールドをみながらこんなことを言った


「・・・ひょっとして、シルバー兄ちゃんの隣に座りたかった?」

「・・はあっ!?」



ごんっ!

驚いて思わずおもいっきり机に頭をぶつけてしまったゴールド


痛そうにおでこをさすっている


しかしその顔は、知ってか知らずか真っ赤になっていた

「冗談だよ、冗談。そんなに顔赤くしなくても」

真っ赤な顔をしているゴールドに、おかしそうにくすくすと笑いながらハートが言う
とたんにゴールドの顔は不機嫌そうな物に変わった



一部始終を見ていたソウルは、やりすぎだ、という意味をこめてハートを殴り、椅子から引きずり落とした


「いってー!!!何すんだよ!!」


すぐさまソウルに反抗するハート
いまにも殴りかかりそうな勢いだ



「腹減った、から来い」

それにたいしてソウルは淡々と言い返し、ハートを引きずっていく


「ちょっ、腹減ったって!まだそんな時間じゃねーだろ!?第一俺はあれ嫌いなんだよ!」


ぎゃーぎゃーぎゃーと叫びながら奥のほうに消えていくハートたち


ブルーはそれを笑顔で見送った


「ふふっ、なかなかやってくれるじゃない、ソウルったら」


ブルーはそうつぶやくと、鞄を持ち、席を立つ


「どっ、どこ行くんスか!?」

驚いたゴールドは、ガタンと音を立て席を立ち上がる


「どこって・・、会議が終わったから遊びにいくのよ」


ブルーは有無を言わさぬ口調でゴールドに言う
それに対し何もいえなくなったゴールドは、すごすごと席についた


「それじゃ、ごゆっくり」


ブルーは最後に死の呪文のような事を言い残し、会議室から消えてしまった



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

無言になるシルバーとゴールド


そのとき、ふとゴールドが思い出したように言った


「そういえば・・、ソウル腹減った、って言ってたけど、ハートの血でも吸うつもりなのか?」

「・・・お前はそんなこともしらなかったのか?あの二人はだいぶ前からそうしてたぞ」

「マジで!?」


シルバーの言葉に驚くゴールド


さて皆さんもうお気づきだろうが・・、さっきから出ている血を吸うという単語がきになるだろう
そうなのだ
みなさんがお考えのとおり、ソウルは吸血鬼

なので血を吸うということは、いたって普通なことなのだ
ソウルとハートは時々ああやって食事をしているらしい


そしてそれを今はじめて知ったゴールドは、驚きの声を上げた、というわけだ


「そか・・・、ソウルも吸血鬼だもんな・・」

「・・・やっぱりお前は馬鹿だな」

「んだと!?」

「だってそうだろう?ほかの家族はみんな知っていることを知らなかったのだから」

「んぎぎぎぎ・・!」


シルバーに馬鹿にされて悔しそうにうねり声を上げるゴールド

しかしシルバーの言ってることはもっともなので、反論する言葉が見つからない



弟のソウルのことを気づけなかったとなっては、兄として失格だろう



「・・・・・・っ、やっぱり俺はてめーなんか嫌いだ!!」

「奇遇だな、俺もだ」

「くそがっ!!」

「・・・しかし、妖怪どうしで血をすっても大丈夫なのか?」

「あ?」

「ハートとソウルのことだ」

「知るかっ!!自分で考えろ!!」


「・・・・・・お前もハートと同じ狼男だったな・・・」

「だからなんだってんだよ!?」

「ちょうどいいということだ」

「う、えっ!?」


そういったかと思うと、シルバーはゴールドに顔を近づけてきた


とっさの事でゴールドはよけられない


「・・・・っ」


体全体の力が抜けていく気がする
嫌でも自分の体から血が抜けているのが分かった


「・・・・・・・・・・・くっ、そ」



ゴールドは精一杯の力でシルバーを押し返す
すると以外にもシルバーは簡単に離れた


「・・・・・・あんまりおいしいとは言いがたいな」

「じゃあ吸うなよ、くそシルバーが」


眉をひそめるシルバーに、苦々しくゴールドが言う



「まあ、不味くはないが――」


そう言いシルバーがゴールドにまた近づこうとした瞬間
ガチャ、と音を立て、会議室の扉が開いた












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