俺、人と遊ぶのが好き。
でも、それ以上に人を観察するのが好きだったりする。
だからな、これもたんなるキョーミからはじめたものなんだよ。
でも、だからこそそういうものが、いつしか楽しみのひとつになったりならなかったりすんだよ。


『いつも見ていた横顔』


公園にある木の下のベンチ。
そこが俺のとくとー席。
ここから見える景色は俺にとって最良のもの。
何故だか早足で通り過ぎるおっさんだとか、デートで何時間も待っている女だとか、色々。
人間の心理が丸見え。
こんなにおもしれー事ってそうそうねーよ。
だから、此処は俺のとくとー席。


『ねぇ君一人?いつもここに居るよね?・・・・・となり、いいかな』


ふと聞こえてきた声に顔を上げれば、数十メートル先にある図書館に、一人の男と、女が居るのが見える。
おーおー、今日はギャル系女子ですか。
毎日大変なこった。
確か昨日は真面目系だったよな?
もてる男はつらいねー。


『・・・・・・・・・・・・好きにしろ』


そう低く呟いた声に、女子が喜んだのが分かる。
昨日も同じ事を言って、結局は相手にしていなかった。
ずっと本に集中しているだけで、顔を上げもしねぇ。
おかげで女子は全員泣いて帰るし。
今まで相手にされた奴なんて見たことないね。
さて、今日はどうなるかな。


『・・・・・・っ、失礼、しました』


しばらくしてそう聞こえてくる声。
その声に思わず大声で笑っちまった。
どうやら今日もあの男の勝ちらしい。
あのいつも窓際に座っているクールで物静かな男の。
最近はここで女が振られるのを見るのが楽しみになっている。
そして同時にあの男をみることも。
そのちょっと赤みを帯びた髪だとか、嘘みてーに白い肌とか。
何故だかわからねーが心を奪われた。
だから初めてその存在に気づいたその日から、ここは俺のとくとー席。
だって誰にも邪魔されず自分の好きなものを好きなだけみれるんだぜ?
それって最高に愉しい事じゃねーか。
ほんと、ここはいい場所だぜ。


「またここにいるのね」

「・・・・・よっ、クリス!」


えらく近くで声がしたと思ったら、いつの間にか後ろに見慣れた女が立っていた。
こいつはクリス。
俺の幼なじみ。
そして俺のよき理解者。
人間観察なんて悪趣味やめなさいというわりには、強く止めはしない。
本人いわく言ってもきかないかららしいが、まあそのとおりだな。
俺を止められるのは俺だけ!
そうだろ?


「・・・・ほんと、いつか痛い目みるわよ」

「へー、そう」


興味なさそうにそういえば、貴方は何も分かっていないといわれてしまう。
何を分かってないというんでしょうね。
別に誰かに迷惑かけているわけじゃねーし。
危ないことは何もしてないぜ?
分かってないのはクリスのほうじゃねーか。


「もう・・・・・・、勝手にしなさい!」


そのまま怒って帰ってしまうクリス。
あー、わりぃ事したかな。
でもどうしてもやめられねーんだ。
だってこの人間観察のおかげで面白いもの見つけたんだぜ?
なのにやめるとか・・・・・・・、あ?
そういえばあいつは?


「・・・・・んだよ、帰っちまったのかよ」


いつの間にか図書館にあいつの姿は無い。
どうやらクリスとごたごたやっている間に帰ってしまったらしい。
でもおかしーな。
まだ帰る時間じゃねーはず。
・・・・ま、いっか。
あいつが居ないんなら楽しさ半減だし、今日は帰るとしよう。


「あ、せっかくだからクリスに謝っていくか!」


そう思った俺は、足をクリスが去っていったほうへと向けるのだった。























「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


いつもの指定席、公園の木の下のベンチ。
しかし俺の気持ちは晴れなかった。
どうしてか。
それは昨日のクリスの言葉が頭に引っかかっているからだ。
引っかかっているといっても、公園でした話が引っかかっているわけではなく、その後言われて事が引っかかっているのだが。
そう、謝るために追いかけた俺に向かって、クリスはこんなことを言ったんだ。
『私貴方にとんでも無いことをしてしまったかもしれないわ』
とんでも無いことってなんだ、そう聞き返したんだけど、クリスは何も教えてくれなかった。
どうせたいしたことじゃないんだろうとその時は笑い飛ばしたが、やっぱり気になる。
クリスのあの表情、いったいなんだっていうんだ。


「あー!!わかんねー!!」


普段使わない頭を使うと、イライラしてくる。
しかも今日はあいつまだ来てないし・・・・・。
こういうときこそ笑いたいのによ!
どうして今日に限って・・・・・・・。
あーーーーー!!!!!
怒りの矛先が思わぬ方向に行きよけいイライラする。
そのせいか俺はいつの間にか隣に誰か座っていたことなんて気づきはしなかった。
ぶつぶつぶつぶつともんくを呟き、時には叫んでみたり。
しばらくしてふと本をめくる音が耳につき、そこでやっと隣に誰かいることに気づいた。


(・・・・・・!?)


驚いて隣を見れば、そこにはなんといつも図書館に居るあいつが居るではないか。
困惑とさっきまでの声を聞かれていたかもしれない恥ずかしさからか、思わず目を背けた。
どうしてここに!?
つーか今までのこと聞かれてた!?
うわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・。
もういっその事逃げ出してしまおうかと思ったとき、ふと気づいた。
あいつの本をめくる音が一定なことに。
ああ、そっか、そうじゃねーか。
俺もあいつにとってはあの女子達となんら変わりはねーんだ。
何もあせることは無かった。


(こういうの拍子抜けっつーのかな。図書館にいねーんじゃバレる可能性のほうが高いし、なによりおもしろくねーし・・・・・)


帰るか。
そう思い立ち上がり、その場を去ろうとする。
しかしそれはかなわなかった。
何故ならいきなり俺の体が傾いたからだ。
突然のことでバランスをとる暇も無く、そのまま後ろへと倒れこむ。
俺は反射的に目をつぶり、来るだろう衝撃をまった。
しかしいつまでたってもきやしない。
さすがにおかしいなと思い、目を開ければ目の前にあいつの顔。
びっくりして飛び起きれば、本をたたむ音が聞こえた。
・・・・は、いや、なんでこんなことになってんの!?
はじめてみる銀の瞳が、やけに恐く感じた。


(なんだよこの状況!?もしかして今までのことがばれて・・・・・。でっ、でもだとしたらもっと早く俺に言うはず。こんなまわりくどいことわざわざする必要がねー!)


困惑した表情で見つめれば、お前にいくつか聞きたいことがあると奴は低く呟いた。
俺は何も言う事ができず、しばらく無言でいた。
その微妙な沈黙が心苦しくなった頃、奴はやっと口を開いた。


「まずは年だ。お前は何歳なんだ?」

「・・・・・・・中二、だけどよ」

「通っている学校は?」

「若葉ってとこ・・・・・・・・」

「誕生日はいつだ」

「7月21日・・・・・・・」

「趣味は」

「・・・・・・・散歩、かな」

「よくこの公園には来るのか?」

「まあ、・・・・・・・な」

「そうか」

「・・・・・・・・・・・・・・・おお」


え、ちょっとまて、何この質問。
まるで新学期にする自己紹介レベルなんですけど。
俺はてっきりもっと拷問的なことをされるかと・・・・・。
なんで見てたんだよ、とか。
ストーカーかよ、とか。
なのになんでだ?
こいつ俺が見てたこと怒ってたんじゃねーの?
そうじゃなきゃますますここに居る理由が分からないんですけど。


「やはり行動に起こしてみて正解だったな」

「なっ、何がだよ」

「遠くで見ているのもそれはそれでいいが、近づいてみないと、分からない事もある」

「っ・・・・・・!?」


ちょっ、何コレ何コレ何だコレ!?
マジでどうしてこんなことになってんだ!?
どうして俺はここに居て、こいつに微笑まれてんの!?
そっかー、笑うことも出来たのかー・・・・・って、そういうことじゃなくて!
なんでこんなことに・・・・・・。
そこまで考えて、俺はやっと気づいた。
・・・・・・・ああ、そっか、そうだったんだ。
俺から見えるっていうことは、こいつからもみえるってことじゃねーか。
どうして気づかなかったんだろ。
観察ってそういうもんじゃん!
しかも俺にいたってはほぼ毎日ここに居るわけだし・・・・・・・。
観察の思わぬ落とし穴に、俺の頭はパンク寸前だった。
あいつはソレを知ってか知らずか、さらに追い討ちをかけるように、俺に言う。


「ずっと気になっていたんだ、お前が。ここに座って楽しそうに笑っているお前が。話しかけてみたかったがなかなかタイミングが悪くてな。俺が話しかけようと決心した日は来なかったり、此処に来るまでに帰ってしまったり。だから、今日は図書館に行かずに直接ここに来たんだ」


俺は見ているつもりでずっと見られてたんだ。
こいつに。
なんだこれ。
なんかわかんねーけど、ヤバイ。
なにがヤバイかはわかんねーけど、何かがヤバイ!


「・・・・・俺は、見てたつもりでずっと見られてたのかよ」

「・・・・・・・・?」

「気づかれるはずなんてねーと思ってたんだ。だって・・・・・・・」


だって、こいつはいつだって、本に夢中だったから・・・・。

「お前、ずっと本しか見てなかったじゃねーか!女子がいたって、誰が傍にいたって、顔を上げることなんてなかったじゃねーか!!ましてや俺と目が合う事なんて・・・・!」

「・・・・・・・は?」


思わずそういってしまえば、あいつは呆気にとられた顔をした。
その顔を見て、俺は自分が言ったことの重大さに気づいた。
やっべ!
これじゃあ自分がしたことを暴露してるようなもんじゃん!!
あほじゃねーか俺!?


「・・・・・そうか、そういうことか」


しばらく呆気に取られていたあいつが、納得したようにそういう。
もうこれ完全に墓穴掘ったし!
いっそのこと逃げだしちまうか?
だってこれぜってーヤベーだろ。
警察沙汰になんじゃね?
いや、警察のお世話になったことは他でもあるんだけど!


「なんだ、お前もだったのか。ならもっと早く話しかければよかった」

「・・・・・・ぇ」


逃げ出す準備をしていれば、思わぬ言葉が返ってきた。
同じって、え、何が?
つーか、何もいわねーの?
いやそっちの方がありがたいんだけども!
ていうかこいつ、気づいてなかった?
え?じゃあなんで此処にきたんだ?
俺を非難しにきたんじゃなければなんで・・・・。


「ゴールド!!」


そこまで考えて、いきなり腕を後ろに引っ張られた。
みてみりゃクリスが俺の腕を掴んでいる。
クリスはそのまま俺を自分のほうに向かせると、凄い形相で聞いてきた。

「ゴールド大丈夫!?」

「だいじょ、って、なにが?」

「今こいつに仕返しされてたんでしょ!」


しっ、仕返し!?
クリスがあいつを睨みつけながらそういったから、つられてそちらのほうを見る。
するとあいつも何か知っているよう。
何この冷戦状態。
お前らなんでにらみ合いしてんだよ!
てかよ、どーでもいいけど俺を挟んでやるのはやめてくれぇぇぇーーー!!!!


「ちょっ、タンマタンマ!無言のにらみ合いしてないで俺に分かるよう説明してくれ!」

「・・・・・・昨日あんたが謝りに来る前に、あの男に呼び止められたの。それであんたの事聞かれたのよ。明日もここに来るかって。たぶんってその時は答えたけど、よくよく考えたらおかしいじゃない!だからあんたがあいつになんかして怒らせたんじゃないかって思ったの!あんた何かしたんでしょ!」

「なっ・・・!いや、した、っつーか、なんつーか・・・・」

「やっぱりしたのね!?」
「・・・・・・した、にはいんのかな」


そういえば、クリスは少しあきれたようだった。
そして、やっぱり痛い目にあったじゃないなんていわれてしまう。
よく状況がわかんねーけど、ようするに、こいつに仕返しされると思ったクリスはわざわざ心配してきてくれたってことだよな?
でも何もされてねーわけだし・・・・・。
つーか、もしろ俺が加害者側なんじゃねーのか?


「とにかく、ゴールドに手を出したら、私が許さないわよ!」

「いや、だからクリスこいつはなにも・・・・」

「・・・・・・・・・・おい、この女は彼女かなんかか?」

「え、や、違うけどよ」


え、なにこれ?
なんでこいつら初対面なのにこんなに険悪なの?
つーか二人とも俺を挟むのやめてくれねーかな。
てか、これ俺のせい?
俺が変なことしてたせい?


「そうか、なら・・・・・・・・・・・・・」

「うわっ!?」


色々なことが畳み掛けるようにおこって、俺の頭はもう出来事を処理しきれなくなっていた。
そしたら今度はあいつに腕を引っ張られ、そのままあいつは走り出してしまう。
もちろん腕を掴まれている俺も走らなきゃいけないわけで。
だんだんとクリスの姿と声が小さくなっていく。
それはどこか他人事のよーで、どうも現実味をおびねぇ。
だって、これいっきに起こりすぎだろ。


「おい!」


前を走る奴を呼べば、少し黙っていろといわれてしまう。
ほんとなんなんだ!?
どうなってんだよこれ!
だって今日もいつもどおり人間観察をしようと思って・・・・・、なのに・・・・・。
本当になんでこんなことになってんだ!!


「ああ、そういえばまだ名を名乗っていなかったな。俺はシルバーだ。よろしくな?」

「っ・・・・・・・」


走りながら振り返った奴はそういって意地悪く笑った。
何故だかその表情に心臓が高鳴り、思わず顔を背ける。
なんだコレなんだコレなにこの感情!?
だってこんなのおかしいって!


「・・・・・・・・ぉぅ」

でも、一番おかしいのは返事をしてしまった俺にちげーねー。
だって色々起こりすぎだし。
これはこれで楽しいし。
・・・・・・ま、いっか?





END





後書き
書き直し第九弾!(たぶん・・・・)
相変わらずのべたです。
おおまかなストーリは変えずに、ちょっと読みにくいなーというところを変えました。
あと甘さと少し抑えました。
自分が呼んで恥ずかしいものは、ちょっとあれなので・・・・・。
夏休み中にサイト改装を終わりたいです。
では、このへんで。

2012年8月13日 管理人渚