『学園LOVEストーリー』
      〜幼なじみ〜



事の発端は、俺が宿題を忘れたことにあった。


『ゴールド君?ちょっといいかな?』

『・・・・・・・はい?』


相手がマツバ先生だった時点で、嫌な予感はしてたんだ。
でも逃げるほどのことじゃないだろうと、俺は逃げなかった。
そしたらマツバ先生は、笑顔でプリントを渡してくるじゃないか。
油断した、と後悔してみても遅く、マツバ先生はもう居ない。
プリントを捨てたくなる衝動を抑えて、俺は携帯電話を取り出した。


『・・・・・で、それが今日一緒に帰れない理由か』

「だってよー、マツバの野郎が・・・・・・」


ぶつぶつと文句をいいながら呟けば、電話越しから溜息をつく音が聞こえる。
なんだよ、別に待っていてくれなんていってないぜ。
一緒に帰りたいわけでもねーし。
報告したんだからさっさと帰れよな。


『全く・・・・・・、お前一人で終わるとは到底思えん』


ガラッと扉が開く音がして、そちらのほうを見れば相変わらず無表情の俺の幼なじみ君が。
何?まさか走ってきたの?
校門から此処まで結構距離あるよな。
そんなに心配されちゃってる訳?
愛されてるなー、俺。
困っちゃう。


「手伝いでもしてくれるのかよ」


近くに居るのにわざと電話越しでそういえば、俺がそんな事をすると思うか?と、冷たい声が返って来る。
はいはい、分かってますよ。
長い付き合いだもんなー。
お前が手伝ってくれることなんて、聞かなくても分かりきってるよ。
なんせこれで26回目・・・・・、ん?27回目だったか?
まあとにかく、それぐらい多いってこと!


「で、今回は何枚出たんだ?」

「あー、5枚、かな。いつも悪いねー」

「もう29回目だからな。いい加減なれた」


俺の目の前に座ったシルバーはそういった。
ありゃりゃ、もう29回目でしたか。
よくおぼえてんなー。そんな細かいこと。
どっかにメモでもしてんのか?
じゃなきゃこんなくだらないこと覚えてられねーだろ。
ま、そういう俺も、同じくらいくだらないことを覚えていたりするんだけどな。
例えば今日こいつを見たのは七回目だとか。
本当にくだらないこと。
自分でもどうして覚えているかなんてわからない。
だから、そのままほっとく。
考えてもわからねーかことはわからねーよ。
考えるだけ無駄!
俺って無駄なことはしない主義なの。
このプリントとかね。


「なぁ、宿題ってすっごく無駄なことだとおもわねぇ?」

「馬鹿言ってないでさっさとやれ」


へいへい、分かりましたよ。
ほんっと、シルバーちゃんは冗談が通じないんだから。
融通が利かない男はもてないぜ〜。・・・・・、なんて、んなことあるはずねーけど。
悲しいことにこの男前のゴールド様より、この根暗君のほうが好きな女子は多いみたいで。
この間も隣のクラスの歩美ちゃんに告白されてやがったしよー。
あー!なんか思い出したら腹立ってきた!


「一発殴らせろよシルバー」

「嫌に決まっているだろう。・・・・・・しかしまた唐突だな」

「俺はいつだって唐突です〜。そんな事分かりきってるだろ?」


確かにな。
そういって笑って、優しく俺の髪を撫でる。
少し子ども扱いされている気がするが、この優しい手は嫌いじゃなかったり。
だって、シルバーがこんなに優しく笑うなんてほかの女子はしらねーだろ?
この空間は俺だけのものなの!
だからちょっと優越感。
お前ら女子には無理だろってな!
まっ、それ以下でもそれ以上でもないんだけどよ。


「で、またどうしたんだ?」

「ん〜?シルバーはモテていいな〜、と」


そういえば左右に動いていた手が止まる。
ちょっと気持ちよかったため、不機嫌そうにシルバーを見れば、何故だか辛そうな顔をしている。
どうした?と聞けば、なんでもないとちょっと困ったように笑った。
ほんの少し何故だろうと、心の奥に引っかかったがあれだ。
考えてもわかんねーだろうから放置。
それに今の俺にシルバーのこと気にしてる余裕ねーし。
まだプリント全然終わってねーんだよ!


「つーわけでやるぞ!シルバー!・・・・・・あ、間違えた。やれ!シルバー!」

「俺だけか。お前もやれよ」


・・・・・・・・あーあ、押し付け作戦失敗。














「あー、明日英語のテストじゃん。嫌なこと思い出しちまったなー」


なんとか補習のプリントを終え、シルバーと帰ってる途中にふと嫌なことを思い出す。
ちなみに今はプリントのせいですっかり遅くなってしまって夜。
今日は晴れだったから星がよくみえて綺麗だぜ〜。
まっ、いつもはいやだけど、たまにはこんな帰り道もいいんじゃねーか?
綺麗だしよ。
一人でってのはさすがに却下だけどな。


「ま、いっか。テストなんてよ」

「よくないだろ。来年は受験生なんだぞ」


早々にテストの事を諦めたら、隣を歩いていた学年主席君から耳が痛い話をされてしまう。
ほんっとシルバーは真面目なんだから。
いいじゃねーか別に、受験なんてよ。
そんなことしても時間の無駄!
今が楽しければそれでいいの!
今を楽しむっていうのが俺のポリシーなんでね。


「いいんだよ別に。どーせ英語なんてわかんねーしよ」


そういえば隣で溜息をつくのが分かった。
これ以上は聞く耳持たないというように歩くスピードを速めるが、後ろからついてくる気配は無い。
んだよ、ちゃんとやれってか?
んなこと俺の勝手だろ!
そのことに妙にイラっとして、文句を言おうと振り返れば、何故だか楽しそうに笑うシルバーが居て。
すっかり怒鳴るタイミングをなくしてしまった。


「そんなに分からないのなら、俺が教えてやろうか?」

「え・・・・・・・・・・・・」


予想外の言葉に反応に困った。
教えるって、今からかよ。
そりゃ教えてくれるんなら嬉しいけどよ。
そんなもん夜までかかっちまうじゃねーか。
言いたかないけど、俺ってかなり馬鹿だぜ?
それにシルバーにも勉強が・・・・・・・・。


「・・・・・・・いらないっつーの。余計なお世話だ!」

「そうか。なら姉さんに遅くなると連絡をしておかないとな」

「だからいらねぇって・・・・」


そう言いかけてやめた。
だってアイツはもうすでに携帯を取り出していたし。
言っても聞かない性格っつーのは長年の付き合いで分かりきってる。
せっかくこっちが遠慮してやったっていうのによー・・・・。
親切心のわからねーやつだ。
第一、これでこいつの成績まで下がったら、俺のせいじゃん。
そんなのってよ・・・・・・。


「やっぱいらねっ・・・」
「もし俺に迷惑がかかると思っているのなら、安心しろ。俺は自分のやりたくないことはやらない主義だからな」


あんまりにもはっきり、綺麗な笑顔でそういうものだから、つい赤面してしまった。
んだよ、それ答えになってねーじゃねーか!
ぷいっと顔を背けて、電話でブルーさんに連絡するシルバーの声を聞いていた。
しばらくして電話が切れる音がして、ふいに後ろから手を取られる。
行くぞといわれれば、おうとしか言えなくて、お互い無言の状態が続く。


「・・・・・・・てかよ、俺も母さんに連絡しなきゃ駄目なんじゃね?」

「言われてみればそうだな」


だいぶ家が近くなった頃初めてそのことに気づく。
鞄から携帯を取り出し母さんの番号をプッシュ。
しばらくして母さんがでて、用件を伝えたらいいわよと明るい声。
それじゃあよろしくと挨拶をして電話をきった。
携帯電話を鞄に戻し、いつの間にか家の前まで来ていたことに気づく。
やっぱもうちょい早く連絡するべきだったか?
これじゃあなにも連絡しなかったのと同じじゃねーか。


「ただいまー」


ドアを開けて大声でそういえば、キッチンのほうからパタパタと走る足音。
案の定足跡の持ち主は母さんで、早かったわねと俺に言った。
シルバーはお邪魔しますと礼儀正しく挨拶をし、靴をそろえてうちにあがる。
こんなときまで嫌味なやつだぜ。
俺まで揃えなくちゃいけなくなるじゃねーか。


「ご飯もう少しかかるから、二階でお勉強しててくれる?」

「ん、そうする」

「もう少し早く連絡してくれれば良かったのにね?」


そういって俺の髪を撫でる母さん。
あー・・・、やっぱそうだよなー・・・・。
でも気づくのが遅かったんだよ。
シルバーも何も言わなかったしさ。
つーか母さん、息子がこんな時間に帰ってきたことはスルーですか。
結構傷つきますよ、俺。


「あら、だって学校で補習だったんでしょう?シルバー君、付き合ってくれてありがとね」

「いえ、別に・・・・・・・」


モロバレかよ!
確かにさっき明日のテストのためにシルバーと勉強するとは言ったけど、補習のことまでは言ってねーぞ?
それにシルバーを付きあわせたとか・・・・・。
なんで分かるんだよ。ひょっとしてエスパー?


「まあ、しいていうなら母親の感かしらね♪それにこれで29回目・・・・・」
「あー!!シッ、シルバー!二階、二階行こうぜ!」


シルバーの背中を押してさっさと階段を駆け上がる。
後ろではくすっと母さんが笑った気がした。
だけどあえて気づかない振り。
だってなんか恥ずかしいじゃねーか。
全部ばれてたとかよ・・・・・・・。
・・・・・・・あー!もう!


「母さんはさー、もう少し一人息子を大切にしようという気持ちを・・・・」

「そうか?充分大切にされていると思うぞ」


部屋の真ん中に机をだして仲良くお勉強・・・・・、いや別に仲良くってわけじゃねーけど。
普通こういうときは向かい合わせに座るもんなんだろうけど、何故か俺は今シルバーに抱きしめられている。
正確に言うとだな、問題を解く俺の後ろからシルバーが教えてくれているわけで。
ちょっとノートを覗き込むたびに髪が首に触れてくすぐってぇ。
問題を丁寧に解説してくれるシルバーにはわりぃけど、俺はそれどころじゃなかった。


「・・・・・・・・聞いてるか?」


俺の様子のおかしさに気づいたのか、ふとこちらを見るシルバー。
その際も髪が首に触れて、くすぐったさにおもわず声を出しそうになってしまった。
慌てて口をふさげば不思議そうにこちらを見てくる。
そして納得したようにああ、と呟くと、サラリと髪を揺らした。


「ひゃっ・・・・!」

「くすぐったかったのか。言ってくれればよかったのに」

「うるせっ・・・・・・!」


変な声を聞かれた恥ずかしさから、ぷいっと顔を背ける。
その間シルバーは、どっからだしたのかゴムを取り出すと、自分の髪を一つに束ねていた。
あまり見たことない姿なのでおもわず見とれてしまう。
なんだよこいつ、結構綺麗な顔立ちしてんだなって、何言ってんだよ俺!
はっと我に返り、目の前の勉強に集中する。
あああああ、俺マジ最悪!
シルバーに見とれるとか!
ちょいと意識しすぎなんじゃねーの?
あー!もう俺の馬鹿!
こんなのどうって事ねーのに!
しかもなんかシルバーに笑われた気がするしよ・・・・・・。
ああむかつく!


「くそっ、誰だよテストとか考えたやつ。今すぐ消えてくれなーかな」

「そういうな。それにたぶんもうとっくに死んでいると思うぞ。・・・・ほら、解いてみろ」


八つ当たり気味にそういえば、また髪を撫でられる。
そんなことされたらもうどうしようも無いわけで。
ぶすっと不機嫌ながらも、この手は嫌いじゃない。だから幸せに思ってしまったり。
仕方ねぇと思う。
何しろずっと一緒に居るから。
やっぱシルバーの傍は、何だかんだいって落ち着くんだよ。


「・・・・・・・なぁ、シルバー」

「ん?」

「俺たち、ずっと親友だよな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん、そうだな」


俺はそう確認することで、確かに幸せを感じていた。
だけど、その時のシルバーは、複雑そうに笑っていたんだ。
勿論、俺がその事に気づくはずが無かった。





続く





後書き
やっと連載第一話目あげましたー。
いや〜、言ってからどんだけたってんだよって話。
もう軽く三ヶ月は過ぎてますね!・・・・・すみません。
にしても、ちゃんと続きが気になる展開になってるかな?
ひょっとしたらこれで一話完結させちゃっても大丈夫か?
い、いや、別にしようとか思ってないけど・・・・・・・・。
ただ次のながいんだよなー・・・・・・。
これの倍ぐらいあるし・・・・・・・。
打つのがなー。
とりあえず、今のところあげるのは二週間ぐらい先になりそう。
えーと、お楽しみに!
どうぞ管理人の気まぐれにつきあってくださいませ!

2011年06月07日管理人 渚