ふと、部屋のインターホンが鳴った。
日曜日という時間を満喫していたゴールドは、その時間を邪魔された事から舌打ちをする。
聴いていた音楽を一時停止すると、イヤホンをはずしてドアへと向かった。
乱暴にドアを開き文句を言おうとするが、その言葉はとまる。
何故ならそこには彼の先輩がいたからだ。
嫌な予感がしてドアを閉めようとするが、とめられた。
恐ろしいほど笑顔の先輩に、ゴールドは冷や汗を流すのだった。


「・・・・・・・えーと、何か用っスか?レッド先輩・・・・・・」

「んー、可愛い後輩の顔見に来ちゃいけないっていうの?」

「・・・・・ソンナコトナイデス」


来て欲しくなかったけど。
ついでかけた言葉を飲み込んで、ゴールドは無理やり笑顔を作る。
いきなり訪ねてきたレッドが、自分にプラスになることをしてくれないのは分かりきったことで。
これで彼の休みがほぼ終わったといっても言い過ぎではないだろう。


「そう、それは良かった。それじゃ、ハイ、これ」

「・・・・・・・へっ?」


いきなり目の前につきだされた封筒を、ゴールドはまじまじと見つめた。
恐る恐る受け取った封筒には、『果たし状』とかかれており、なんだか穏やかな雰囲気じゃない。
果たし状を突きつけられていい気分になる人など居るはずがなく、彼もまた不可解極まりない表情になるのだった。
しかし珍しく無理難題を押し付ける先輩がそのまま帰ろうとするので、ゴールドはほっと一息をついた。
本当は果たし状の事を突っ込みたいのだが、それをするとまた厄介なことになりそうなのでほうっておく。
そのまま部屋に戻ろうとすれば、レッドはだいぶ離れたところで振り返り、こんなことを言うのだ。


「ちなみにそれ、シルバー宛だから」

「・・・・・・えっ!?ちょっ、待ってください!!レッド先ぱっ・・・・・!!」


彼の叫び声もむなしく、そこにレッドの姿はもう無かった。
手の中に残された封筒を見て、はぁーと溜息をつく。
シルバーというのは勿論彼の同室者のことで。
彼いわくかなりむかつくヤツらしい。
そんなヤツに手紙を渡すなんて冗談じゃないわけで。
休日モードから一気に地獄に落とされるのであった。


「あー!!なんであの人は厄介ごとを持ってくんだ!どうせならシルバーが居るときにきてくれりゃーいいのに!」


彼の言い分ももっともだ。
どうせなら本人が居るときに来てくれれば良かったわけで。
しかし本人が留守では同室者に預けるのもおかしくは無い。
極自然なことだ。
ちゃっと渡してさっさと休日に戻ればいい。
それだけのことなのだが、ゴールドにとってはそれだけではすまない。
試しに自分がシルバーに封筒を渡すところを想像するが、なんとも気持ち悪い。
おもわず鳥肌が立ってしまい、ゴールドは首を横にぶんぶんと振った。
いっその事机の上に置いておけばいい。
そうも考えたのだが、それじゃあ気づかない可能性もある。
どうするべきか。
考えても答えは出ない。
停止した音楽はスタートされぬまま、ただ時間だけが悪戯に過ぎていった。
そして夕方になったころ。


ガチャ・・・。


やっと同室者であるシルバーが帰って来た。
今まで座り込んでいたゴールドは急に立ち上がると、まだ靴も脱いでいないシルバーに手紙を押し付ける。
結局ストレートに渡すことにしたらしい。
しかし言葉は無く、そのまま自分の部屋へと帰ってしまう。
ドアが乱暴に閉まった音を聞いて、シルバーはやっと状況を理解するのだった。
といっても、少ししか理解できていないのだが。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


とりあえず靴を脱ぎ自分の部屋へと戻る。
ベッドに腰かけ『果たし状』と書かれた手紙を開いてみる。
随分と読みにくい文字を追っていくうちにシルバーは、だんだん不可解そうな顔になるのだった。
読み終わった後はため息をついて、手紙をくしゃくしゃに丸めた。
そのままゴミ箱に投げ入れて、ベッドに寝転がる。
さっき読んだ内容を思い出しながら、シルバーは知らず知らずのうちに拳を握っていた。


「ゴールドを賭けて決闘だと?・・・・・・・ふざけるな」


いったいその言葉は何に向かって言ったのか。
ゴールドをとられそうになって焦っている?
そんなものは論外だ。
ならば決闘を申し込まれたことが不愉快だった?
確かに愉快でもないが、不愉快でもない。
ならゴールドは俺の物ではないと。
・・・・・・一理ある。ヤツは俺のものではない。告白するのなら勝手にすればいい。
結局のところ、シルバーにもよく分からない事なのだ。
なぜ怒りを感じるのか。
分からないからこそさらにイライラする。
こんな時にゴールドの声が聞こえてきたらさらにイライラするだろう。
そんな事を思いながら、シルバーは眠りに落ちていくのだった。











「あぁ?シルバーだぁ?」


次の日の昼、ゴールドはクリスに呼び止められた。
シルバーの居場所を聞かれて、知らねぇと口を開きかけたが、ふと昨日のことを思い出す。
昨日届けた果たし状。
もしかしたらそれに行っているのかもしれない。
まあどちらにしろ、自分には関係のないことなのだが。
ありのままをクリスに伝え、その場を立ち去ろうとする。
すると今度は別の用事で引き止められた。
ゴールドにとっては、そっちの方がよっぽど驚くべきことだった。
思わず大声で叫んでしまい、周りからの注目を受ける。
しかしそれを気にした風もなく、クリスはさらに続けるのだ。


「だから、応援に行ってあげたら?」

「なんで俺が!」

「だってシルバーの友達でしょう?友達がピンチのときは助けに行ってあげるものよ」


それはそうかもしれないが。
思わずゴールドは黙る。
第一、あのシルバーがそこらへんのヤツに負けるだろうか。
いや、負けないだろう。
それに、ゴールド達は友達でもなんでもない。
百歩譲って友達だとしても、男同士の真剣勝負を邪魔するというのはどうだろうか。
よくないだろう。
そして何より、ゴールド自身の気が乗らない。
俺があいつを助けるとか、ありえねぇ!


「嫌に決まってんだろ!そんなに行きたきゃ、クリスが行けよ!」

「ちょっと、ゴールド!?・・・・・・・・もう、あれも一種の信頼ってやつなのかしら」


さっさとどこかへ行ってしまうゴールドを見て、クリスはそう呟いた。
ゴールドはゴールドでぶらぶらと校内を歩くだけ。
もうとっくに授業が始まる時間だというのに、どうにも行く気がしない。
今日は天気がいいから外にサボりに行くのもいいだろう。
そう思い、鼻歌交じりに校外へと出て行く。
思ったとおり外は気持ちよく、思わず駆け出したくなった。
こんなに天気がいいのなら、ちょっと遠くにある立ち入り禁止の野原に行くのもいいかもしれない。
あそこは不良のたまり場となっているが、この時間ならおそらく誰も居ないだろう。
不良さえ居なければ、あそこは風が心地よいいい昼ねスポットだ。
もともと立ち入り禁止の場所だとかは、ゴールドにとっては意味のないこと。
さっそく足を野原のほうへと足を向けるのだった。
途中暑いからアイスを買って食べたり、寝ている猫に挨拶をしたりとのんびり歩いているうちに、いつの間にかついていた。
フェンスの向こうにある野原に駆け寄ろうとして、ゴールドの顔は歪んだ。
何故ならそこには同室者で大嫌いなシルバーが居たからだ。
どうやら決闘をする場所はここだったらしい。
せっかく来たが、シルバーが居るなら話は別。
とてもじゃないが昼寝する気にはなれない。
かといってこのまま帰るのもかなりしゃくだ。
帰ることも前に進むことも出来ず、ゴールドはその場に立ち続けた。
するとその間に決闘相手が来て、決闘が始まってしまう。
しかも何やら若干シルバーが不利。
シルバーにしては珍しく苦戦している。
これではクリスの言っていたとおり、応援に来たようなものじゃないか。
さっさと帰れ、帰ってしまえ。
その場から離れようとするが、足は全く動かない。
思考とは裏腹に心はここに居ることを望んでいるのだろうか。
そんなまさか!
自分で自分をあざ笑う。
それでも足は動かなかった。
その間に決闘のほうも変化を見せ、相手の拳がシルバーを捉えようとする。
まさにその瞬間だった。

ガシャンッ!!


「てめぇくそシルバァァァッ!!!俺以外に負けてなんかみろっ!!一生てめぇを許さねぇかんなぁぁぁっ!!!!!」


今まで全く動く様子を見せなかったゴールドが、いきなりフェンスをよじ登りそう叫ぶ。
叫び終わった後は力が抜けてしまったらしい。
そのままフェンスの向こう側に落下し、頭を打ち付けた。
慌てて顔を上げれば、さっきまでとは形勢逆転。
鮮やかに蹴りを決め込むシルバーが居た。
その姿を見て恥かしいやら悔しいやら。
戦闘を終えたシルバーがこちらに来るのを見て、何を思ったか再びフェンスを越えようとする。
人間追い詰められたら何をするか分かったもんじゃない。
もちろん逃げられるはずがなく、あっさりと手首を掴まれてしまった。
向きを反させられたら嫌でも目が合うわけで。
ゴールドはほんのり頬を赤くさせるのだった。


「・・・・・・・・・・・てっ、てめー、わざと手を抜いてやがったなぁ!?」

「当たり前だろう?あんな相手に本気を出すまでもない。そんな事より・・・・・・・・」


そっとゴールドの頬に触れる。
触れられたゴールドは、体温の差を体で感じびくっとした。
少し自分より高い位置に居るシルバー。
何かを考えているようで、その目はこちらを見ていない。
見てほしいわけではないが、見られていないというのも随分むかつくものだ。
少しイライラした様子で声をかければ、思い出したようにシルバーはゴールドを見た。
そして言った。


「そうか。結局勝負の行方など、関係なかったのかもしれない」

「あぁ?何言ってんだてめー」


言われたことが理解できず、聞き返せば、意地悪な笑みがそこにあった。
そのまま引き寄せられ、耳元でとんでもないことをささやかれれば、自然と体温は高くなる。
知らず知らずのうちにゴールドは顔を赤くさせ、おもいっきりシルバーの足を踏みつけた。


「んな訳ねーだろっ!!」


駆け出してその場から逃げ出す。
後ろを振り返らずに逃げ出したゴールドの顔は、まだ赤いままだった。



『フェンスを飛び越える』



お前はいつだって俺の物だろう?


(誰がてめーの物になんてなるかっ!!)






後書き
いや〜、最近サイト放置気味だったからな〜。
とりあえず夏休みに入りましたので更新を。
しかし受験生に夏はないのです・・・・・。
っと、管理人の呟きは置いておきまして、この作品の後書きを。
もとはノートで書いたものをパソコンに打ち込んだので、所々行が少なかったりやけに多かったり・・・・・。
一言で言えば訳が分からない作品となりました。
私的にはまずフェンスの飛び越え方を考えたんですよ。
そしたらゴールド君がフェンスによじ登りながらシルバーに叫んぶ場面が浮かんできまして、よし、これでいこうと。
理由はのちのち考えて、負けるな!って感じの応援がいいかなと。
でもシルバーが手を抜く理由ってなんだ?って、行き詰まりまして、暗雲が立ち込めてきましたね。
そもそもゴールド飛び越えてないし、よじ登ってるし。
どうしようかな〜と考えた末、落としました。
これで飛び越えてるよね!キラーン!
まあ、こんな感じで四苦八苦しながら出来上がった作品です。
それなりに気に入っているので、皆様にもお楽しみ頂けたらなと思います。
では、ありがとうございました!