ひどくイライラする。


『ブラックブラッド』


ため息をついたところで、そのイライラが消えることなんて無かった。
原因・・・・。
そんなものは分かっている。


「・・・・・んだよシルバー」

「なにがだ」

「さっきから人のことじろじろ見すぎなんだよ。喧嘩売ってんのかぁ?」

「・・・・・・あぁ、かもな」


ポツリと出た言葉は自分でも驚くものだった。
目の前で呑気にアイスを食べているこの男に、喧嘩を売ったことがないといえばうそになる。
ただ、売られるのがほとんど。
買うのもほとんど。
けれど、今この状況で売るつもりなんて全く無かった。
無論、喧嘩をする気も無かった。
では何故喧嘩を売るようなまねをしたのか。
それは、自然に口を出たこの言葉は、きっとホンシンだからだ。


「・・・・・売ってんの?・・・・・わりぃーけど、今買う気ねーから」


そうだろうな。
そう返したら、驚いたように目を見開くゴールド。
売ったと肯定したときは驚かなかったくせに、今は驚く。
それに少しの優越感。
同時に、黒いものが自分の中に渦巻く。
あぁ、イライラする。


「てめーは俺の気持ちでも読めんのかよ」

「明日合コンに行くんだろう?だから、顔の怪我は避けたい、喧嘩するのは避けようと。・・・・違うか?」

「・・・・・・知ってたのかよ」

「たまたま耳に入っただけだ」


第一、俺をイライラさせる原因がそこにあるのに、知らないはずがない。
ついでかけた言葉を飲み込んで、向かいに座るゴールドから目をそらした。
手に持っていた本に目を移すと、奴もそれ以上会話を続ける気はないらしく、アイスを持ったまま自分の部屋へと戻っていった。
扉が閉まった音を耳にして、ため息一つ。
合コンに行く事を知ったのは本当に偶然だった。
中庭で昼寝をしていたら、やたらとうるさい男子生徒の声が聞こえてきて。
見れば渡り廊下を渡る数人の男子生徒と、奴が居て。
楽しそうに馬鹿面しながら、大声で、合コンにいくんだと予定を立てていた。
こちらに気づくことなく通り過ぎたアイツ。
寝ぼけた頭が不快を感じるのに、そう時間はかからなかった。
夜、寮に帰ってきたらやけに上機嫌で、ソファーに寝転がりながらテレビを見ていた。
また心に広がるものがあり、テレビのまん前に座ってやった。
最初こそは怒ったが、よほど『合コン』が楽しみなのか、楽しそうにアイスなんて取り出して、食べだす。
眼中にないことに腹が立った。
それは事実。
売れるものなら喧嘩を売って、その顔台無しにしてやればよかった。
これも事実。


「・・・・・・ああ、イライラする」


いっそのこと部屋に閉じ込めてしまおうか。
なんて、喧嘩も売れなかった臆病な自分に、できるはずがない。
頭の中に廻るイライラと不快。
デキルコト、デキナイコト。


「なんて馬鹿馬鹿しい」


呟いた言葉は思ったより大きく、小さかった。
変える気は無い。
変わる気も無い。
とりあえず現状維持。
ナニかが変わる、その時までは。




END



後書き
日にちをはさんだから、当初予定していたものと大分違うものになりました。
書き直し第四弾。
一応『どうか私を救って』の、シルバーバージョン。
制作秘話としましては、最初は書き直しするつもりが無かった事。
でも書くか、と書いているうちに、いつの間にかシルバーバージョンになっていたという恐ろしい話。
せっかくだから、『大嫌い』の対になる話も書こうかなと思っています。
書けるか暗中模索ですけど・・・・・。
では、今日はこのへんで。
サイトプチ改装が終わるのはいつになることやら・・・。
では!


2012年3月23日 管理人・渚